第54話

「おい、お前。」


舞子のお付きの若い男に声をかける。


「は、はいっ。」


「お前のお付きのお嬢だろ。せめて組の品位を落とさない様な格好くらいさせろ。親戚としてすら恥ずかしい。」


困り顔の男は俯く。


「まあ、あの叔父貴は娘に甘いからな。言えねえか。」


俺が呟くとこくこくと頷いた。


「仕方ねえな。叔父貴には俺から話す。」


「「「え?」」」


「舞子に迷惑してる話をだ。」


「匠さまっ!?」


「勝手に俺の女のフリして俺が遊んだ一般人の女に嫌がらせしたろうが。」


「‥‥‥っ。」


嫌がらせなんて軽いレベルじゃねえがな。三人目まで気付かずコイツに好きな真似を許しちまった。

安生が毛嫌いするのはそんな後先考えない行動だ。無関係なくせに余計な事を。

舞子の行動は『松江組』の品格を落とした。笑うなよ?ヤクザの品格なんてと。

極秘文書を見りゃ銃刀法違反とかバリバリにやってたしそんなヤクザが今さらかよって話だがそんでも、松江組には松江組なりの譲れない矜持ってのが有るわけで。


「今度、俺の前にその面見せたら総力上げて弓槻を潰してやる。」


ここまで言われてこの娘をまだ野放しにする様な無能な父親なら

例え曰く付きの叔父貴でも、


「もう、要らねぇ。」


俺の冷たい声に男共は抱えるように舞子を連れて玄関から走り出た。

言い過ぎたか。

少しの後悔は


「壺ごと塩撒いとけ!」


安生の声と


「「「喜んでっ!」」」


嬉々としてしたがう組の奴等の声に苦笑いと共に掻き消された。

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