第50話
「匠さんの事を聞いてきたぜ。婚約はホントかとか、相手の女はどんなだ。とか。知るかよ!!」
ぎゃーぎゃーまとわりついて煩かったと葉崎はげっそりとした顔でソファーに座り込んだ。
「で、彼女は?」
「帰ったぜ。『匠さんは美人の許嫁の為に本家で勉強してる。』って言ったから。」
眉をしかめた俺に
「根性はありそうだから、今頃は松江の本宅を訪ねてるかもね。」
ヘラりと笑って見せる。
チッ。俺の舌打ちに葉崎の肩が跳ねた。
「使えませんね。匠さんは相手をしてくれと頼んだんですから本宅に向かわせたらアウトでしょう。」
「確かにな。」
波多野の相槌に葉崎はガックリと肩を落とした。
「なんだよ。じゃ波多野っちが相手をしてみてよ。」
「パス。あんな危険な女に関わったら人生踏み外す。」
大正解。
まさにお手本の様な答えですね。
しかしまあ、そう言ってる訳にも行きません。
「天城く~ん。」
「半べそかいて、すがるな臭い!!」
泣き崩れる(フリの)葉崎に背を向けて俺は仕方なく本家の安生亮に電話を入れた。
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