第37話

「近畿のヤクザかぁ…」


真治の目がキラリと光る。戦闘モードに入ったな。

ソファーから立ち上がり


「喧嘩、売ってもいいよな!」


ワクワクとした口調は隠せない。

腕を試すつもりだな。


「好きにしろ。」


「…ヤられても知りませんよ。」


俺達のエールを受けて真治は部屋を出た。まあ、無理だろうな。


「正体がバレて何時までも留まる馬鹿ならともかくね。」


充が呟いて俺を見る。


「ちゃんと苦情位は言ったんでしょうね。」


「小田切聡太によろしく。とは言った。」


笑いながら答えると


「首を洗って待ってろ。位は言って良かったのに。」


本気なんだか冗談なんだか…。


「まあ、いいんじゃないんですか。お互いの挨拶代わりですし。」


やがて携帯の呼び出し音に


「…はい。」


充がでて通話を始める。


バタン!!


乱暴にドアを開けて部屋に帰って来た真治はご立腹で


「逃げられた!」


やっぱりな言葉を吐いた。


「捕まえたら喧嘩させろよ!」


言い張る真治は仲間に山田太郎を追わせたらしい。まだその辺りにいると思ってるらしいが


「無理ですよ。既に高速に乗ってます。」


「は?」


「速いな。仲間が待機してたか。」


「ええ。ハーレーが来たそうです。

2ケツですし流石に振り切られはしなかったようですが追い付けもしなかった。」


充の報告に


「誰をつけたんだ。」


俺が聞くと


山口友也やまぐちともや。」


『緋色』きっての走り屋の名をあげた。


「山口をつけて追い付けないなら仕方ないだろ。」

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