第36話

「何で近畿敬侠会トップの組が『緋色』に潜り込むんだ。」


探るなら松江組だろ。そんな目で俺を見る真治もまた馬鹿ではない。


「松江と言うより俺がターゲットだと思う。」


「はぁっ!?」


奇声を上げたのは真治で、呆れた声は充。


「一体何をやらかしたんですか。」


俺は肩を竦めて答えた。


「小田切のパソコンをハッキングした?」


「暴力団の。しかも会派のトップの!?馬鹿ですか!」


充は容赦ない毒を吐いた。


「仕方ねえだろ。まさか『シェン』がヤクザだったなんて。それも小田切の構成員とか知らなかったし。」


俺の言葉に今度は充が奇声を上げた。


「『シェン』だって!?」


俺が頷くと「シェンが小田切に…。」

充が呆然と呟いた。


「『シェン』って?」


真治はハッキングをヤらねえから知らないのも無理はない。


「世界的なハッカー。俺は中国人だと思ってた。

『シェン』は中国語で神って意味。」


我にかえった充がハテナ顔の真治に説明した。

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