第35話

「会わせてよ。噂じゃ中々の美人じゃん。」


「‥‥‥」


どんな噂だよ。

婚約の事は流したが画像を付けた訳じゃないし年も態と書いてないからな。

まあ勝手に妄想しとけ!


「会わす気はねえよ。相手はヤクザのお嬢だ。一般人は関わらねえに限る。」


俺の言葉に真治はムッと不機嫌な顔をした。


「ですね。火傷しますよ。」


真治に冷たく言葉を浴びせる充の親父は実は安生の妹の旦那。つまり義理の弟でやっぱり松江の構成員だった。もう故人だが。

組長ではないから世襲とかはないし、ヤクザに成らずとも、頭の良いこいつなら上手く世間を渡れそうだ。

ただ逆に俺が側近に欲しいタイプだったりするんだよな。

冷静沈着。俺には足りないピースだ。

さてどうやって口説くかな。

そんな風に思案してると


「外川が連れてきた奴ですか。」


サラリと当てるコイツはヤッパリ役に立つ。


「気付いてたのか。」


「許嫁が近畿の方でしたからね。お国言葉は中々隠せませんし。アクセントでなんとなく。」


流石。天城充!


「え?じゃ七瀬組のスパイ?!」


真治の声に失笑した。


「違う。アレは小田切だ。」


「小田切?」


「近畿を統括する敬侠会トップの組です。」


充の声に真治が黙り込んだ。

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