暴走族のカリスマ

『緋色』の狂犬

第31話

七瀬快里と春菜の親子は婚約話が纏まった日の内に近畿に帰って行った。

七瀬のシマは琵琶湖の西に位置する。

古くからの歓楽街を抱えて財政はなかなか潤っているらしい。

それ故、狙撃なんぞと言う物騒な洗礼を受けたのだが。

北陸気鋭会松江組の息子と近畿敬侠会七瀬組の娘の婚約はネットで全国の暴力団に配信された。

2人共に未成年であったし然程騒がれる事もなかった。

とは言え、婚約者が出来たことは紛れもない事実で。

俺は毎年夏に春菜が住む地元の浴衣祭りに出掛けて七瀬の本宅に泊まる。

春菜は秋の気比乃神社の大祭に松江組に泊まりに来ることになり、お互いの交流を深める事になった。

とは言っても年に2度ほどの接触で相手は未だガキだ。女に対する態度に然程変化は無かった。

俺の意識は組を継ぐ事、気鋭会の事に絞られていた。

その為にはと、

学校を終えた俺は溜まり場となってる郊外のレストランのドアを開けた。

閉められてかなり経つから看板や照明灯は外されている。間違って一般人が紛れ込むことは無い。

広い駐車場には相変わらず沢山のバイクが停められている。


緋色ひいろ』と言う名前は不良達を集めて組織化したジイさんが付けた名前だ。

発足当時はただの愚連隊。盛り場を彷徨いては喧嘩三昧だったらしい。

それが何代前からか時代の流行りに乗って暴走までヤリだした。

ただ、残念な事に夏季限定。冬に北陸の積雪がある道をバイクで走るなんて芸当はシュワちゃんにでも無理だからな。

愚連隊っつうよりは族の方がイケてるから、俺らは暴走族『緋色』を名乗っている。

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