第30話

春菜ちゃんがまだ5才児だからか。はたまた彼女の人柄か。

松江組の幹部連中は彼女がいたく気に入っている。

祭りを案内した橘もずっと人混みで彼女を抱っこしてたみたいだし

安生に至っては『亮ちゃん』と呼ぶのを許している。

かく言う俺もこっそり『匠真君』と呼ばせた事は2人だけの秘密だ。

春菜ちゃんの笑顔には癒しの効果がある。

あの笑顔で『パパ』と呼ばれるなら悪くない。うん。

あの『女に不器用でひねたバカ息子』が彼女に見切られないように祈るのみ。

七瀬春菜との婚約話を期にと言うか快里の話を聞いてだが

組の事には然程意識を向けなかった匠が七瀬悠里や小田切聡太の話を聞く内に自分の立ち位置を自覚した。

組の跡を継ぐだけでなく

まさか北陸気鋭会を掌握することまで意識し始めるとは。

小躍りしたいくらいの副産物だ。

独り息子の匠は良くも悪くも唯我独尊。それが競う相手を見付けて成長しようともがきだした。


「ありがとうな。快里。」


後悔はさせない。春菜ちゃんにはこの地で幸せになってもらう。俺達松江組をあげてサポートするから。

俺は旧友に心から礼を言い頭を下げた。






side 松江匠真  end

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