第29話

「成る程。ここ北陸の地盤固めの為の結婚話はないと言う事か。」


快里の声に軽く頷く。


「他の組にお嬢はいるにはいるがどれも気に入らねえ。」


俺の声に快里が苦笑した。


「息子の嫁さんだぞ。」


「匠は女には無関心だ。 女嫌いと言うより厄介な存在だと毛嫌いしてる。」


「ぷっ!あの年で女を厄介な存在だと思ってるのか。」


吹き出す快里に


「ヒネてるだろ?」


俺も苦笑いを返した。

アイツの周りの奴はろくな恋愛をしてないからな。傍で見て女に幻滅したって所だ。匠の女の扱いを見ればわかる。


「春菜ちゃんには信じられないくらい優しかったらしい。

安生から報告をうけて安心した。」


俺の言葉に快里は首を振る。


「いやいや、相手が幼いから本能的に庇護したんだろ。」


「…かもな?けど、それが続けば愛情に変わる事は十分考えられる。

逆に春菜ちゃん以外には期待できねえんだよ。」


「‥‥‥」


俺の言葉に快里は思案中と言った所か。


「二人の婚約を進めてかまわないか。」


伺う様に問いかける俺に


「匠君が同意した時点で既に成立してるだろ。俺に依存はない。

強いていうなら春菜の意思だが随分懐いていたらしいから問題はないだろう。」


そうだな。今のところは。

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