第23話

「匠さん、七瀬をお訪ねの時は是非小田切にお連れしましょう。

組長は無理ですが村木辰弥むらきたつやに引き合わせます。」


「村木?」


「はい。ヤクザながらネットの世界では有名な男です。彼は組長の側近ですが幸い悠里を気に入ってくれてます。貴方にも興味を持っているようですし。」


七瀬快里の声に胸が弾む。


「もしかしてその男が。」


コンピューターウイルスを送り込んだ奴か?


「…その世界では『シェン』と呼ばれてます。」


「『シェン』?!嘘だろ…。」


世界的に有名なハッカーが小田切組にいるのか!呆然とする俺に


「彼は小田切の跡取りの小田切聡太の教育係でもあります。」


小田切聡太おだきりそうた。」


「はい。まだ13才ながら恐ろしい程の才能に溢れた人です。」


13才…年下かよ。


「2月生まれですから、貴方よりは1学年下ですね。彼が無事成長し小田切組を継げば必ず他の組を掌握するでしょう。『近畿敬侠会』は安泰です。それほどの器です。」


「‥‥‥」


七瀬悠里に村木辰弥。その上、小田切聡太か。

ゾクゾクするな。

俺は上がりそうになる口角を押さえて


「その節はよろしくお願いします。」


殊勝に頭を下げた。

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