第14話

長い廊下を幾つか曲がり何時も朝飯を食う和室に入る。

長机に飯の支度が1人分。午前10時を過ぎれば無理もない。


「おはようございます。随分ごゆっくりでしたな匠坊。」


ニヤリと嫌味な笑いと共に俺を迎えたのは、安生の狸親爺だ。

相変わらず無駄にデカイ狸腹だな。


「亮ちゃん。匠を連れて来たよ。」

俺の肩の上で春菜はドヤ顔で胸を張った。


「ご苦労様でした春菜様。匠坊とも仲良くなって良かったですね。」

普段からは考えられない位丁寧に話す安生。


「うん。匠は優しいよ。何も言わないのに肩に乗せてくれた。」


「そうですか。それは嬉しいですね。」


「うん。嬉しかった。」


「‥‥‥」

無邪気に喜ぶ春菜。


ただ春菜の歩くのがトロイから面倒臭くて肩に担いで歩いただけなんだが。俺は優しい奴なんかじゃねえ。

チクリチクりと胸が痛むのは何故だ。

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