第10話

「匠様、まだ眠いの。亮ちゃんが『ご飯だよ』って呼んでるよ。」

放心状態でベッドに突っ伏した俺に心配そうに声をかける春菜。


いつもなら、『うるせえ!放って置け。』と怒鳴るところだが

さすがに幼稚園児にそれをやる程ガキじゃねえ。

俺はのっそりと起き上がると


「春菜。俺の事は匠様じゃなくて匠でいい。」

優しく言い聞かせると


「呼び捨てはダメだよ。初音はつね先生も言ってたもん。」

大人顔でたしなめられた。

ハツネ先生?


「幼稚園の先生か。」


「うん。すみれ組の先生だよ。」

やっぱり幼稚園児かよ。がっくり肩を落とす俺に


「じゃあ、匠君って呼ぶね。」

春菜がドヤ顔で言った。


『たくみクン』?

なんだそのゾワゾワする呼び方は!


「春菜。その呼び方は」

駄目だ!と言う前に邪魔が入った。

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