第4話

「匠。お前、許嫁いいなずけを持て。守るもんが増えりゃちっとは考えも改まるだろ。」

苦笑いしていた俺の耳にジイさんの信じられない声が響いた。


イイナズケ?

聞きなれない言葉に上手く漢字変換出来ない。

俺の間抜け面に勘違いしたジイさんは説明を続けた。


「別に今すぐ結婚しろとは言わねえ。相手も有ることだ。」


そこまで聞いてやっと『許嫁』のことだと理解できた。


「ちょっと待てジイさん。俺はまだ中学生だぞ!」


確かに女はもう知ってるがアレはヤるもんであって守るモンじゃねえ。

そんな考えの俺が許嫁を持ったからって何が変わる?

変わらねえだろ!


「相手は近畿敬侠会きんきけいきょうかい七瀬組ななせぐみのお嬢だ。喜べ。お前にはもったいないくらい可愛い娘だぞ。」

ジイさんの声に目眩がした。


「話になんねえ。」

席を立とうとした俺を


「匠、座れ。」

声だけで威圧したのは親父である匠真。

完全に若頭モードだ。


「‥‥っ、決定事項かよ。」

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