第3話

「匠、今回で何度目だ。

いい加減我慢することも学べ。この分では組を継ぐまでに早死にするぞ。」


祖父である松江組長の苦々しい声に吹き出しそうになった。

俺の行為はそのまま親父や祖父の若い頃の行為のトレースだ。


確かに今回の喧嘩にはキレた一般人がナイフを振り回すと言うサプライズ付きだったからジイさんが心配するのもわからねえじゃないが。

喧嘩慣れしてない奴がめくらめっぽうに刃物を振り回すと軌道が読めなくて避けきれない。お陰で俺の右頬には赤い切り傷が残っている。

傷でも残ればちっとは極道らしく見えるかとも思ったが、自慢の反射神経の良さのお陰で薄皮を切っただけ。

ヒリヒリとした痛みも直ぐになくなりそうだ。


「ジイさん。そう言うのを味噌が糞を笑うっつんじゃね?余計なお世話だよ。」

俺が我慢出来ずに言い返すと


「…釈迦に説法か。」

低い声で呟くのは若頭である親父松江匠真だ。

ジイさんと親父は良く似た顔立ちだ。

俺が2人から受け継いだのはそっくりな声と黒くて癖の無い髪くらいか。

まあ、この低い声のお陰で顔は似てなくとも松江の血筋は疑われたことはない。

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