第5話

「それで、お話はもういいですか。

今の私は『心火』にも城田蒼士にもなんの関係もありませんから。」


じゃあと踵を返そうとしたら前を塞がれた。


「あんた城田蒼士を殴ったんだって?」


噂は早いな。


「見てたんですか。」


「「「‥‥!!」」」


ひゅっと息を飲む音が聞こえたと思ったら凄い殺気に囲まれた。


「質問に答えただけなのに。」


ため息をついた私は目の前の彼女にいきなり制服の胸元を掴まれた。振り上げられる右腕。


「尚美!」


制止する誰かの声にも彼女の手は止まらない。仕方ないなぁ。


「正当防衛だから。」


ほんとは殴られなきゃ駄目かもなんだけど殴られたら痛いもん。目の前にある胸をつかむ手を掴むと噛みついて怯んだところで身を交わし後ろに踏み込んで膝で蹴る。

ずさっ、と音をたてて倒れた彼女に仲間の女達がいきり立って襲いかかる。


「それ、卑怯だから。」


狭い空間で1対5とかあり得ない。

髪とか制服とか捕まれて揉み合いになったら勝ち目がない。

…ので


「取り敢えず逃げるし!」


「「「…ああ゛!?」」」


脱兎のように逃げ出す私を追う5人の女。リーダーだけは階段に座り込んで動かない。

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