第65話

夕飯時、亜依ちゃんの心尽くしの御馳走が並ぶテーブル。

予定外の闖入者に秀一郎さんはご機嫌ナナメだ。

ビシバシとキツイ視線を林に投げる秀一郎さん。いやぶつけてるな。殴るみたいに。

お陰で林の顔色が悪い。

普段は組員皆で囲むテーブルも特別な客が来ると小さなテーブルで別室での食事になる。

それも秀一郎さんには気に入らないらしい。

「特別な客」ってのがな。


「…大変だったねえ。

でもヤクザになるのはどうかな。お家の人も心配するよ。勘当されちゃうかも。」

亜依ちゃんはマイペース。普通に会話してるだけだ。


「あ、家族はたぶん気にもしないと思います。」


「え?」


「唯一の取り柄が無くなったんで。ラグビー出来ない俺は要らないって言われました。」

なんだそれ。


「親戚に同じようにラグビーやってる奴がいて、そいつ日本代表になったりしたもんで。次の期待が俺にかかったってか

そりゃあもう熱心だったんですけど、

怪我で復帰は無理だと知った途端に手のひら返したみたいに無関心になって、今、夫婦仲は最悪です。離婚すると思います。俺のせいっすね。」


「林…。」

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