第58話

結局、昼飯を食い損なった俺は空きっ腹を抱え放課後を迎える。

さて、亜依ちゃんの弁当どうすっかな。手付かずで持って帰れないしな。

教室で食って帰るか。

空き教室とかまだよくわかんねえんだよな。


「湯島くん。」


「あ?」

クラスメートに声をかけられた。

『龍牙』には見えないな。小柄で弱っちそうだ。


「あの僕、長谷川はせがわって言います。その、」


「ん?」

取り敢えず害がなさそうな奴だし優しくしとこう。


「湯島くん今朝綺麗なお姉さんと学校に来たのかな。」

おずおずと聞く長谷川。なんだ朝見てたのか。


「ああ。亜依ちゃんか。」


「その人美人?」


「ああ。めちゃくちゃ美人。何だよ。見てたんじゃねえの。」


「えと頼まれて。そのお姉さんの知り合いなら空き教室に連れて来てって。」


「ふうん。」

頼まれてねえ。そいつら新手のナンパか。俺を手先にしてまさかな。そんな回りくどい。


「そこ、人気が無いところか。」


「え?あ、うん。空き教室だから人はあまり来ない。」


「よし行くか。案内してくれるか。」


「え!行くの?」


「ああ。ちょうど弁当食べる場所を探してたし。ここは人目があるから落ち着かねえ

。」


「弁当 って。」


「昼休みちょっと食い損なった。」

にかっと笑うと長谷川も困った顔で笑った。

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