第56話

期待して振り返った俺はがっかりした。

かなり大柄な男が2人。

襟章から見て3年生。

素人…だよな。てっきり喧嘩を吹っ掛けられるのかと期待してたのに。


「なんか用っすか。」


言葉使いも乱暴になる。

早く電話して亜依ちゃんの手作り弁当食うんだし。


「お前1年の転校生だな。」


「それが?」

転校生がなんだよ。


「この学校には『龍牙』っつうタチの悪い族がいる。」


「…へえ。」

それは知らなかった。

ちょっと面白そうじゃん。『龍王』や『鬼神』より強いのかな。わくわくしちまう。俺は湯島組だから組長は代々『鬼神』と言う族に入る。決まりじゃないけどそんな感じだ。

けど俺的には『鬼神』より仲の良い『龍王』のが性に合う感じなんだ。

元『龍王』総長の秀一郎さんの組に身を寄せた理由の1つにはそれがある。


「だから危ねえんだよ。転校生は狙われてボコられる。」


「へえ。それはまた。」

なんて楽しそうな。うずうずしちまう。


「だから俺らが守ってやる。」


「要りません。教えてくれてありがとうございました。」

すごく好い人だ。お礼を言って背を向けた。


「こら待て。」

「話をちゃんと聞けっ。」

「金払えば守るっつってんだろ。」

後ろからぎゃあぎゃあうるさい奴等に


「あ゛?! しつけえな。」

普段の物言いで喋っちまった。

だいたい金払えとかカツアゲじゃねえかよ。

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