第53話

ほっとため息。なんとか無事に転入手続き終了。あとは英斗次第だ。

学園生活を楽しむのも楽しまないのもね。


『帰ろっか。』

隣の金城さんを見上げると眉間に思い切りシワが寄っていた。


「亜依さま、後ろに。」

外では決して若姐さんと呼ばない金城さん。私を背後に庇った。


「ねえねえ、おねーさん美人だね。教材屋さん?」

聞こえた声は軽くてどうやらこの学校の生徒らしい。


「‥‥‥」

紺色のスーツを着た私とグレーのスーツの金城さん。

そうか教材屋さんのイメージなのか。

理事長室から出てきたしなぁ。

ヤクザに見えなくて一応ほっとした。

英斗のあの態度なら直ぐに湯島の跡取りだとバレそうだけど、私からバラす訳にはいかないしね。


「そこを退いて下さい。」

金城さんは穏やかに言う。

さすがに一般人相手に怒鳴りはしない。うん。出来た人だ。着いてきてもらって正解。


「やだよ。あんたは退いて。俺おねーさんと話したいんだし。」

高校生の僕は金城さんを押し退けようとしてるみたいだけど無理だろうな。

彼は伊達に秀一郎の側にいる訳じゃないし。

「っ、たたっ!いってぇ!」

少しだけ金城さんが動いたと思ったら、わりとガタイのいい男の子が腕を捻り上げられてた。

金城さんは軽く彼を押しやり私を促す。


「亜依さま玄関に。」

私は軽く頷き歩き出す。


「待てよ。俺『龍牙』の幹部だし。このままじゃ済まさねえからな。」

明らかな【負け犬の遠吠え】なセリフの高校生のぼくちゃんに歩みを止めた。


『龍牙…?』

それってついこの間、高速を一緒に走った族だ。私はスタスタと彼に近付き顔を覗き込む。

う~ん。

こんな顔した子なんて


『いたっけ。』

あの時龍牙はバンダナして顔隠してたしな。


「確かに龍牙はここに何人かいると聞いてますが。」


『ふうん。』

なんか残念。龍牙ってレベル低い。

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