第51話

「はじめまして。渡辺箔也わたなべはくやと申します。若頭邸の奥を預かっています。」

渡辺さんはエイに頭を下げた。


湯島英斗ゆしまえいとです。渡辺さんの事は色々聞いてます。」


「涼子さまですね。お元気でいらっしゃいますか。」


「そりゃあもう。」

インフルエンザにかかってもらいたい位だとエイは笑った。

う~ん、やっぱり可笑しい。


『ねえ、なんで涼子姉?普通ひでちゃんの名前が出るんじゃないの。』

何だかやたらに涼子姉の名前が出る。

何で真嶋でこんなに涼子姉の知名度が高いんだろ。


「そりゃあもう、凄い剣幕で怒鳴り込んでらっしゃいましたから。」


『‥‥‥は?』

なにそれ。いつの話よ。


「知らなかったんだ。」


『だから、いつの話よ!』


「亜依さまが桜華学園に籠られた時です。」


『‥‥嘘っ。』


「マジ。」

いや。即答されても困る。


「お袋が急に居なくなってさ。まあ護衛は数人連れてたけど。」


「はい。それはもう凄い剣幕で、『事と次第によっては成瀬3姉妹が相手になる。真嶋を潰してやる!』とそれはもうまるで怒れる雌豹のようでした。」


『雌豹って…。お袋は!止めなかったのか?』


「成瀬の婆ちゃんは爺ちゃんイビってたしな。手が回らなかったんじゃね。

美鈴ちゃんは宥めてたけどお袋には勝てないしな。

亜紀おばさんは外国だったし。」

なるほど止める奴が居なかったのか。


『ごめん渡辺さん。迷惑かけたね。』


「いえいえ。亜依さまが謝られる事ではありません。どちらかといえば若頭に非があります。」


「あと成瀬の爺ちゃんにもな。」

エイは思いだし笑いをして金髪を揺らす。


「亜依ちゃんが帰るまで随分イビられてたよ。お袋と3人の娘達にさ。」

一体何されたんだか。

自業自得だとは思うがちょっと哀れかも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る