工藤里江との和解
第43話
「…お久しぶりです。」
どう声をかけるべきか。
悩んで結局普通に挨拶してしまった。
「ごめんなさい。迷惑かけて。嫌な思いさせたわ。」
里江さんに言われて思い出しちまった。送信されてきたあの画像。
「確かにあれは酷いね。」
あれを見せられたら関係を否定しきれない。
「母親を言いくるめるだけの証拠写真が必要だったの。結構必死だったのよ。」
疲れたように笑う里江さんはまるで初対面と印象が違う。
「だけど、やってる途中でむなしくなったと言うかムカついたと言うか、
これも全部アンタが片桐誠之介なんてひっぱりだすからだって思い込んで
運転手のスマホからアドレス調べて画像送り付けたの。逆恨みだよね。
今ならわかるわ。本当にごめんなさい。」
沢山の気持ちを吐き出して里江さんは私にまた頭を下げた。やられたことにはムカつくけど言葉に嘘は無さそうだ。
「‥‥‥」
「でも結局、眠るロウ君に裸で跨がるだけで精一杯。
あの写真じゃ微妙でしょ。」
「確かに。」
私にはひと目で秀一郎が爆睡中だとわかったけどさ。
「幸か不幸か画像撮ってる時にロウ君が起きて、
寝ぼけてたから、ちょっと誘ってみたんだけど、けんもほろろ。払い除けられちゃった。」
「‥‥誘って?」
誘われたのか。秀一郎を見上げると、
「なんだよ。なんもしてねえぞ。」
不機嫌に唸られた。
「…ふふっ無駄だとは思ったのよ。
ロウ君、寝言でずっと貴女の名前呼んでたしね。」
「そうなの。」
ちょっと嬉しいかも。
「知るか!寝てたんだ。」
うっすら赤くなった秀一郎に笑ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます