第38話

「秀一郎…」

私は真っ直ぐ秀一郎の瞳を覗き込む。

一度ゆらりとゆれた瞳は覚悟を決めたように私の瞳を見つめ返す。

その真っ直ぐな瞳に私は安堵して微笑んだ。


「バカ。2度はないからっ!」

秀一郎の胸に飛び込む。ぎゅっと抱き締めてくれる腕がここち良い。


「ごめん。悪かった。」


「…大変だね金城さん。」

殴られ損と笑うエイは

壁ぎわに踞りこちらを見てた金城さんに手を差し出す。


「…貴方は?」

少し警戒しながらも敵ではないと判断したみたい。


「聞いてねえのか。

湯島英斗。真嶋に住んでこっちの高校に通う。親父は秀一郎さんには意地悪して言ってないかもだけど、さすがに組長の許可は取ってる筈だよ。」

首をかしげて自己紹介するエイ。


「湯島…涼子様の!申し訳ありません。若頭邸は今、インフルエンザ蔓延中で。」

金城さんはあわてて立ち上がると痛そうに顔をしかめた。湯島と聞いて出てくる名前は涼子姉なのか。私は密かに驚いてた。


「もしかして渡辺さんとか服部さんもダウン?」


「はい。渡辺はそろそろ復帰できますが、服部はまだ無理かと。」

エイと金城さんの会話は続き秀一郎は私を抱いたままエイに向き合った。


「湯島英斗。亜依が世話になったな。礼をいう。」

軽く頭を下げた。

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