第33話

「事情はわかった。」

俺は里江を見ながら金城に告げる。


「金城、二人は鍵の掛かる部屋に拘束。亜依が見つかるまでだ。」

「はい。」

「生かすも殺すも亜依次第。いいな。」

「「「はいっ。」」」

「ロウくん。ごめん巻き込んで。」

「謝るなら亜依にだろ。自分が同じことされたらどう感じるか考えろ。」

「ごめん。私、彼女にちゃんと謝りたいわ。」

里江と淳志は殿山達に連れられて行った。


「甘くないですか?」

田辺は不満そうだが、


「お袋が百合を産むのにどんなに苦労したか知ってるからな。」

抗争の中、必死で妊娠を隠して年の離れた妹を残したお袋。

お袋が死んで組は錬治が精神面はお袋そっくりの百合が救ってくれた。

母親という台詞に俺は確かに弱いかも知れないが

今の真嶋は俺と亜依でお袋が生きてた時以上に活気で溢れている。

今の真嶋には、いや俺には


「亜依が必要だ。里江は放って置いて良い。残る真嶋の総力を上げて亜依を捕まえろ。」


「「「はいっ!」」」

逃がすか。真嶋の若頭の力をみくびってんじゃねえぞ。

俺はスマホを手に亜依の姉妹に電話をかけた。

亜紀、涼子、美鈴。

亜依も含めて成瀬の四姉妹は頭が良くて比類ないくらい美人だ。

何より彼女達は末娘の亜依を溺愛している。

彼女達に亜依の保護を頼めば必ず彼女達の男が動く。亜紀さんの息子は私設自警団『月下』代表、涼子さんの旦那は『湯島組』若頭。美鈴さんの旦那は『成瀬組』若頭。

何れも最強の男達。亜依を取り戻せるなら俺のメンツなんか踏み潰したって構わない!


「金城、亜依が最後に目撃された場所は。」


「1時間ほど前、JRの最寄り駅ですが。まさか若頭…」


「バイクで出る。止めるなよ。邪魔したら殺しちまいそうだ。」

ニヤリと口角を上げると、


「お供します。」

ため息混じりに頭を下げた。

悪いな苦労かけて。

けど亜依のことだけは譲れねえ。




side 真嶋秀一郎 end

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る