第32話

「で。うちの御披露目に片桐誠之介が来る話を何処で?

ああ。工藤の姐さんは優理花様のお姉さまでしたね。仲は悪かったみたいですが。」

この話はトップシークレット。真嶋でも上の奴しか知らない話だ。

金城の声に里江が肩を竦めた。


「母さんは優理花叔母さんと何かと張り合ってたから。私にもそれなりの相手をめあわせて片桐誠之介に祝福してもらおうと考えたわけ。」


「無理だろ。」

里江と片桐誠之介にはなんの接点もない。


「言っても聞かないのよ。パパは恐妻家だしね。下手に妊娠したのなんて言ったら強制的に堕ろされちゃう。」

里江はそっと腹を擦る。


「この子を守るために真嶋秀一郎の名前が欲しかっただけ。」


「あ?」


「下手な相手じゃダメなの。でも優理花叔母さんの息子が相手なら母さんも静観すると思って。

だって家庭壊したりしたがりそうだし。母さんは優理花叔母さんが絡めば異常反応するしね。

だからベッドで寝てる写真を撮って母親に見せるつもりだったの。真嶋の子かもしれないって。」


「‥‥‥」

あり得ねえ。


「貴方に迷惑かける気はなかったのよ。写真だけ撮ったら真嶋に連絡して帰すつもりだったし。睡眠薬はもっと効いてるはずだったんだ。」


「なんだよそれ。」


「無謀な計画だと思ったけど、護衛の体調が悪そうだったし服部さんも居なかったしね。チャンスだと思った。

今ならやれるって。」

気の抜けた俺に里江は笑いかけた。


「実際やれた時は驚いちゃった。神様っているんだって。もともと赤ちゃんは淳志との子だし。

無事に産んじゃえば孫可愛さになんとでもなると思ったしね。

もし貴方の手元に写真が来たって覚えが無きゃ突っぱねるでしょ。」


「腹の子を守るためにですか。」


「そうよ。それだけ。」

あっけらかんと言う里江にかける言葉がねえ。


「でもいざとなったら、やっぱり迷って。さすがに裸で抱き合って画像撮るとかね。淳志とも言い合いになったりして。子供の為に動いてるのに淳志に責められて。腹がたったのよ。これも全部真嶋亜依のせいだって!」


「だからなんで亜依のせいなんだよ!」


「逆上してたんだもん。あの時は片桐誠之助イコール真嶋亜依って気持ちだったの!だから勢いで写真送信しちゃったのよ。淳志は止めようとしてスマホを取り上げて。その騒ぎで貴方が起きたのよ。」

なんて迷惑な話だ。


「最低だな。」

「ごめんなさい。反省してるわ。」

今更だ。

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