工藤里江の事情

第26話

「わかった話すわ!」

里江の声に銃を下ろし安全装置をかけ直した。


「まず東條をどうした、」

羽根枕を放した俺の質問に、


「まだ車の中。淳志が眠らせてスマホを取り上げたわ。」

里江は躊躇わずに話し出した。


「俺と同じ方法か。」


「護衛が倒れたから来て欲しいって言って首筋に針を射した。指輪に仕込んだ注射針。」


「お前、どんな趣味だよ。」

仕込みのある指輪とかスパイかよ。


「私じゃないわよ。前に付き合った男が変態の医者だっただけ。」


「男の趣味、悪すぎだろ。」

俺の言葉に里江は肩を竦めた。


「自覚してるわ。」

俺は淳志と呼ばれてる気絶した男のポケットを探る。里江の言葉通り出てきた東條のスマホを回収した。

電源を入れると恐ろしい数の着信やメールが届く。


「心配かけちまったな。」

俺は筆頭に名前がある金城成海に電話をかけた。待ちかねていたのかワンコールででる。


『東條っ!若頭は無事かっ!!』

何時もは冷静な金城の焦った声に罪悪感を覚える。


「ああ。無事だ。」


『…若頭?』


「悪い金城、迎えを頼めるか。場所はRホテルのスイート。伊達と東條は眠らされちまってんだ。」


『そこには工藤里江とご一緒に?』

流石だな。調べをつけていたのか。


「ああ。」

俺の言葉に金城は大きなため息をついて俺の耳元で爆弾を爆発させた。


『ああ。ではありません!亜依さまが怒って家出してしまわれました。』


「ああ゛?!」

今、家出したと言ったのか!

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