第25話

俺が運転手の事を口にした途端に里江の瞳が揺れた。コイツやっぱり東條に迄手を出しやがった。


「里江。」


「な、なによ、怖い顔して。」


「俺は基本、女には手を出さねえ。

だかお前のやったことは笑って済ませるレベルじゃねえ。」

無断外泊なんぞさせやがって亜依がキレたらどうしてくれんだ。


「きゃあっ!」

俺は里江を押さえつけ腕を捻り上げると着ていたガウンの紐で後ろ手に縛り上げる。


「お、お嬢を離せっ!」

聞こえた声に目をやれば、ため息が出た。さっき俺がのした男がよろよろと立ち上がり銃を構えていた。


「お前なぁ…」

俺は里江をベッドに転がして男に近付く。


「く、来るな撃つぞ!」


「撃てよ。」

安全装置がかかったままなんだけど。

間抜け面の男からあっさり銃を奪うと持ち変えて銃尻で顎を殴り上げた。


ガツン!


淳志あつしっ!!」

里江に淳志と呼ばれた男はあっさり白目を剥いて気絶した。

あれ?コイツ誰かに似てねえか。

顔をよく見ようと銃を手に近寄ると、


「止めて、撃たないで。」

今までのらりくらりと俺の質問をかわしていた里江が金切り声を挙げた。


「へえ。」

じっと覗き込んだ男の顔は何処と無く叔父の真嶋錬治に似ていた。

もちろん錬治の方が何倍も逞しいが。

俺は里江を睨むと淳志と呼ばれた男に銃を向けた。


「ちょっ止めてよ!」


「俺を拉致った訳は?」


「‥‥‥」

無言の里江の前で銃の安全装置を解除する。


「至近距離だからな。即死だ。」

サイレンサー代わりにと羽根枕を間に挟む。そのまま無造作に引き金を引こうとした時、里江が折れた。


「わかった話すわ!」

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