不覚 Side真嶋秀一郎

第21話

side 真嶋秀一郎


『なんか企んでる臭いがぷんぷんするから絶対に接触しないで!』

亜依が拗ねたような声でそう訴えた時、嫉妬されてると思い俺は小躍りするくらい嬉しかった。相手の名前は工藤里江。彼女の母親は俺の母の姉にあたる。ただし異母姉妹って奴だ。

母方の祖母は、里江の母が早死にしたあと彼女の父と再婚。生まれたのが俺の母の優理花ゆりか


里江が父親の弟の錬治を婿に狙った過去はあるが、亜依の心配は論外。俺には真嶋を、里江には工藤を継がなきゃならない定めがある。

第一俺には亜依しか無理だし。

年上の里江を女として見た事はない。貪欲で強かな女だし。裸で寝たって抱かない自信がある。

俺は伊達の熱っぽい体を抱えながら、前を歩く里江を見る。


「絶対無理だな。」

イク気がしねえ。

前を歩く里江が足を止める。


「この部屋なんだけど。」

いつの間にか手にしたカードキーで部屋を開ける。


「今、支配人に部屋を取ってもらってる。取り合えず彼を私の部屋に。」


「ああ。悪い。」


「いいのよ。医者の手配も済ませたし。」

伊達を寝かせたら東條に連絡して金城を呼ばねえとな。

俺は里江の開けたドアから躊躇わずに部屋に入った。


チクリ!


「‥‥‥?」

すれ違いざま俺の首筋を押さえる里江。


「り、?」

ストン!と堕ちた暗闇。


「凄い効き目ね。」

里江の呟きさえ耳に入らなかった。

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