第19話

乾杯と共に交わされる社交辞令。

「おめでとうございます。お披露目を楽しみにしてます。」


「ありがとうございます。お越しをお待ちしております。」

うちの若頭が亜依さまとのお披露目の祝いを受けている隣で


「いよいよ、跡取りですな。男の子だとよろしいですな。」


「…ありがとうございます。」

成瀬の若頭が若姐の懐妊の祝いを受けていて更にその奥では


「ご長男英斗君の嫁には是非うちの娘を。」


「いやいや、英斗はまだガキですから。」

湯島の若頭がハイエナの様に寄って来る組長達を笑顔で交わしていた。

目が笑ってねえし

怖っ。背中をぞくりと寒気が走った。

一時間もすればほとんどの組との挨拶も終わり


「そろそろ帰るぞ。」

湯島の若頭が抜けたのを確認してから若頭が俺に囁いて主催の工藤の組長に声をかけに行く。

黙って帰っても非礼にはならないが一声かけるのが礼儀だと若頭は心得ていた。

正直ほっとした。

やっと今日の仕事が終わる。

会場を出たら東條に連絡して車を回させないとな。

工藤の組長に挨拶してる若頭の後ろで、そんな段取りをしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る