第17話

関東龍聖会に所属する組は全部で30強。

主宰する組のやり方で座敷だったりテーブルだったり立食だったりと形式はバラバラだ。

出席者もその場を主宰する組により、組長だったり若頭だったりとまちまち。力のある組が主催なら組長が集まるしそうじゃなきや若頭が集まる。

今回のホテルの懇親会は大広間での立食だった。

主宰は工藤組。今日は若頭が多いが…


「よお、秀一郎。」

「秀人さん、お久しぶりです。式の時は態々教会までありがとうございました。」

若頭が頭を下げているのは湯島組の若頭の湯島秀人ゆしまひでとさん。亜依さまのお姉さまの夫に当たる。つまり義理の兄だ。とても40代には見えない。精悍な顔立ち。


「お兄ちゃんと呼んで良いぞ。」

どうやら酒を飲んでご機嫌らしい。

苦笑いする若頭に、


「お元気そうですね。」

声をかけたのは


「朗、こっちも結婚式いらいだな。美鈴ちゃんは順調か?」

成瀬組の若頭。成瀬朗なるせあきら。言わずと知れた亜依さまの義理の兄だ。


「お陰さまで順調です。」


「美鈴ちゃん、大事にしてやれよ。」


「はい。」

成瀬の若頭が若姐を溺愛してるのはかなり有名で聞きながら苦笑しそうになった。ちなみに若姐さんは妊娠中。

新婚のウチの若頭と共に会場のアチコチで祝福を受けていた。


「朗さん。」


「よう、秀一郎。じゃねえ真嶋組若頭。」

成瀬の若頭は秀一郎様に頭を下げる。

組の地位は3人の中では成瀬が一番低い。ウチと湯島は同等で2強と言う感じか。


「嫌だな。3人の時は秀一郎と呼び捨てて下さい。昔みたく。」

昔、若頭は成瀬に世話になってたから朗さんには本当の兄貴みたく懐いている。朗さんは笑うと小声で


「亜依お嬢は、いやもう若姐さんか。元気か。また成瀬に連れて帰って来い。みんな喜ぶ。」


「…ありがとうございます。」

苦笑する若頭。

そりゃあそうだ。すったもんだしてやっと嫁にしたんだから。まだまだ安心して実家には帰れないな。

それにしても壮観だ。

龍聖会を引っ張る若き覇者が3人。

40代、30代、20代、年代はバラバラながら圧倒的オーラで他の組長、若頭を威圧している。

その中の1人がまだ20代ながら3人の中でもひけを取らない俺の仕える若頭。誇らしくて武者震いがする思いだ。

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