第3話

秀一郎への仕返しは現在進行形。

何故なら、自分で言うのもなんだけど秀一郎は私にベタ惚れなのだ。

しかも昔のトラウマがあって逃げられる事に過剰反応する。

故に、私に逃げられれば一番堪える筈。

まあ浮気が真実ならたいして堪えないんだろうけど。

…ネガティブになってきた。らしくねぇ。

数人の組員をやり過ごして、もう動いて大丈夫かと考えてると

ポン!と背中を叩かれた。


「‥‥‥!」

「綺麗なおねーさん。暇なら遊ばない。」

「‥‥‥」

「おや額に皺寄せちゃって。美人が台無し。」

棒読みの台詞がウザい。


「煩いわね。エイ。

あんたこんな所で何してんのよ。」

軽いナンパ野郎かと思えば、そこに立っていたのは良く知る甥っ子だった。

私の2番目の姉、湯島涼子ゆしまりょうこの長男。

湯島英斗ゆしまえいと

父親は湯島秀人ゆしまひでと広域指定暴力団こうえきしていぼうりょくだん湯島組ゆしまぐみ若頭わかがしらだったりする。

めちゃくちゃ軽いオヤジで『ひでちゃん』と呼ばされてるせいで、

彼の長男の英斗えいとをエイ。次男の英哉ひでやはビイと呼んでいる。


え?酷いって。う~ん子供の頃から呼んでるし今さら変えられないしね。それに彼らもニコニコして返事してたしさ。まあ幼稚園の頃だけどさ。それはいい。


「あんた何っ。金髪なの!不良じゃん。見た目軽い。軽すぎるっ。」

私の声にエイは苦笑した。


「亜依ちゃん、いつの時代の女だよ。こんな髪の奴なんか何処にでもいるじゃん。」

ふふんと鼻で笑うコイツは私より3つ年下の16才高校1年だ。


「自分だって昔からダイヤのピアスしてんじゃん。」


「これはらんちゃんとの大事な思い出なの!」

秀一郎だって公認なのだ。らんちゃんは私の第二の父親みたいなもんで秀一郎とも顔見知り。


「親父から連絡行ってねぇ?俺、亜依ちゃんちに世話になって、こっちの学校通いたいんだけど。」


「はああっ。あんたこないだ緑王りょくおう学園に入学したばっかりじゃん。」


「う~ん。なんか合わないっぽい。」

なんだその怠い言い訳は。


「だいたいこっちの学校だって受け入れてくれるかどうか解んないだろ。」


「お袋が金積んだって。」

涼子姉までグルかよ。

まさか私のお目付け役じゃないよな。

へらへら笑う甥っ子を胡散臭い目で見詰めた。

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