第11話


友情を育むどころか、あれ以来、会っていない。かといって、女性嫌いの相手に無理に会いに行くのも、きっと負担になるだろう。




「セレスタ様、そろそろ気分転換にお出かけされてはいかがでしょうか?」



部屋にこもってばかりのセレスタを気遣い、柔らかな声が耳に届く。セラフィスから一緒に仕えてくれている侍女、エレーヌが声をかけたのだ。


セレスタは顔を上げ、少し考え込むように窓の外を見つめた。部屋に閉じこもっているか、庭を散歩するかしかない日々……。これでは、ますます思い詰めるばかりだ。


「……行ける場所なんて、限られてるわ。でも、あなたが言うなら、少し外に出てみようかしら。」


エレーヌは微笑みながら、彼女の近くに寄り添った。


「お茶会はいかがでしょうか?アルバリアの貴族たちが集まる場所ですので、セレスタ様のお立場を示すにもよい機会かと思いますし、リュシアン様の周りにいる女性たちについても知ることができるかもしれません。」


「お茶会……」


思わず眉をひそめたセレスタ。アルバリアに来てから、彼女が参加するのは常に公式な行事ばかりで、心から楽しめたことなど一度もなかった。貴族たちの視線は、どこか冷ややかで、彼女を好奇の目で見ているかのようだった。


しかし、リュシアンのことをもっと知りたいという気持ちが彼女の中で少しずつ膨らんでいく。彼の過去や、女性嫌いになった理由を聞いたのも最近のことだ。


「……わかった、行ってみるわ。」


ゆっくりと立ち上がったセレスタは、エレーヌに向き直った。その瞳には、迷いを抱えながらも決意の光が宿っていた。


エレーヌは、主の決意に感心したように頷いた。幼い頃からずっとセレスタを見守ってきた彼女には、姫が抱える不安や焦りが痛いほど伝わっていた。


「かしこまりました、セレスタ様。では、準備をいたしますね。」



優雅に頭を下げるエレーヌの姿を見送りながら、セレスタはそっと息を吐いた。戦場で剣を振るうことは恐れなかったのに、こうして人の心に踏み込むことのほうがずっと怖い。でも、動かなければ何も変わらない。







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