第6話
次にリュシアンと顔を合わせるのはいつになるのだろうと考えていたが、その機会は突然訪れた。
セレスタは緊張感に包まれた表情で、アルバリアの魔法騎士団の訓練場に足を踏み入れていた。騎士たちの視線が一斉に自分に向けられる。彼女は、執事から大切な書類だと言われたリュシアンの忘れ物を届けるために訪れたが...彼女の存在がこの騎士団でどう思われているか、すでに察していた。
周囲の騎士たちの間で交わされる低いささやきや、冷ややかな視線が痛い。
「見てみろ、あれがセラフィスの王女か。美しいな....でも魔法は使えないんだろう?。」
「どんなに剣が上手くても、魔法が使えなくてはな。」
「あんな体で...本当に前線で戦ってたのか?」
セレスタは心の中で強く息を吸い込み、これ以上の無礼を耐え忍ぶことにした。その時、訓練場の中央から一人の女性が近づいてきた。
周りの声から彼女がレイナという名前だと知る。騎士団の中でもエリートらしい。
「セラフィスの王女様がこちらに何用で?」
無礼ではあるが、穏便に済ませたい。
「...リュシアン様の忘れ物を届けに」
初めて彼の名前を呼んだだめ、若干声が緊張してしまった。
「忘れ物を……リュシアン様のためにわざわざ?それはご苦労なことですわ。」
彼女の声には、どこか小馬鹿にした響きが混ざっていた。それを感じ取ったセレスタの心は静かに波立ったが、表には出さず、ただ平然を装って微笑んだ。周囲の騎士たちは、二人のやりとりに興味津々といった様子で見守っている。
「たまたま家を出る時に目に入っただけで……騎士団の皆様のお仕事を邪魔するつもりはありません。」
その返答を聞いて、レイナは小さく鼻で笑った。
「ほう、謙虚なことですわね。けれど、あなたの存在そのものがこの場にふさわしくないと感じている者も少なくないのですよ。....団長もこんな婚姻、可哀想に」
彼女の言葉には明確な敵意が滲んでいた。それを受けて、騎士たちのささやきは再び活気づき、まるで獲物を前にした狼たちのように低く唸りを上げた。リュシアンとの婚姻が決まった時から歓迎されないことは覚悟していたが、こうして直接敵意を向けられるのは、決して気持ちのいいものではなかった。
「それでも、陛下のご命令ですから。私も、この地でできることを尽くすつもりです。」
彼女はあくまで冷静を保ちながら、静かに言葉を続けた。相手の挑発には乗らない。これが王女としての矜持だと信じていたからだ。
レイナはその様子をじっと見つめ、次の瞬間、何かを決めたように目を細めた。
「……それなら、一つ見せてもらえませんか?この地で尽くすということは、実力がなければできないこと」
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