第36話「茜が神様に抗議しようとしたけど、またしてもトラブルに巻き込まれた件」


「もう我慢の限界よ!」


 茜は怒りのままに空を見上げ、再び神様に抗議しようとした。さっきのカボチャ魔物事件で、結局、自分が解決したのに神様は何も手伝わなかったし、玉だって使えなかった。これはさすがに不公平だと思わずにはいられない。


「神様、出てきなさい! どうして玉が役に立たなかったのよ!? しかも、カボチャ魔物にカボチャを渡したら終わりとか、そんな展開ある?」


 彼女が叫ぶと、空に怪しげな雲が現れ、雷のような音が鳴り響いた。あ、これヤバいかな…と思った瞬間――


「うるさいぞ、茜。毎度毎度クレームばかりだな。ちょっとは自分の力で何とかしろって言ってるだろ?」


 ズボラ…いや、マイペースな声が再び空から響いた。茜は一瞬怯んだが、すぐに反論する。


「ちょっと何それ! 私だって一生懸命やってるのに、神様の方がズボ…適当すぎるんじゃない?」


 すると、神様は急にトーンを変えて、


「まあまあ、そんなに怒るなよ。だって、お前さ…人間の世界、もう帰れないんだろ? 火葬されたらしいし」


「え、えぇぇっ!? 火葬って、私の体って…」


 茜はその言葉を聞いて一瞬固まった。そうだ、異世界に来た時のことを思い返しても、何となく元の世界に帰れるかもなんて考えていたが、現実的に考えれば、もう彼女の肉体はこの世に存在していない可能性が高い。


「…ってことは、私、もう帰れないじゃん!」


 彼女はショックを受け、しばらく呆然とするが、すぐに立ち直った。


「まあ、別に元の世界で大したことしてたわけじゃないし…異世界生活もそれなりに楽しいし、いっか!」


 そう言って、自分を納得させようとするが、ふと気づいた。


「でも待って、もしこの世界で死んだらどうなるの? それって…二度目の火葬?」


 今度はその恐ろしい考えに震えが止まらない。


「やっぱり、今のうちに神様にちゃんと願いを叶えてもらわないと!」


 彼女は再び空に向かって叫ぶ。


「ねぇ、神様! もう一回願いを考え直していいでしょ? もっとまともな願いに変更したいんだけど!」


 しかし、空から返ってきたのは冷たい一言だった。


「もう遅い。願いは既に受理済みだ。キャンセル不可だ」


「キャンセル不可って、通販じゃないんだから!」


 茜は思わず突っ込みを入れたが、どうやら本気で神様は話を聞いてくれないらしい。そうして困り果てたところへ――


「お嬢さん、何か困ってるみたいだな」


 突然、茜の後ろから声がかかった。振り返ると、何とそこには妙にカッコよさそうな、でも胡散臭い中年男性が立っていた。彼は黒いマントを羽織り、目には謎のサングラス。


「えっと…誰?」


「俺か? 俺は魔王だ。お前のその無理難題、俺が解決してやろう」


「は!? 魔王? しかも、無理難題って…そんなに無理なこと言ってたつもりはないんだけど」


 茜は驚きと戸惑いで頭がぐるぐるしていたが、どうやらこの胡散臭い魔王は、神様に代わって何か解決策を持っているらしい。


「さぁ、俺について来い。お前の望み、叶えてやるぞ」


「いやいや、魔王にそんなこと頼んだら、絶対ろくなことにならないでしょ!」


 茜は即座に拒否するが、魔王は笑いながら肩をすくめた。


「まぁ、好きにするがいいさ。ただ、ここで何もしないよりは面白い展開になると思うけどな?」


 そう言って、魔王は悠々と立ち去っていった。茜は呆然とその背中を見送りながら、心の中でぼやいた。


「なんか、神様も魔王も、どっちも頼りにならないなぁ…」


 +++++


 次回予告:「茜が魔王の策略にハマったけど、予想外に助けられた件」

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