第35話「茜がカボチャを使って予想外の事態に巻き込まれた件」
「カボチャかぁ…どうしろっていうのよ」
茜は手の中にあるカボチャをじっと見つめ、ため息をついた。先ほど王様からもらった「特別に甘いカボチャ」らしいが、今の状況で食べる気には到底ならない。魔物を倒してカボチャとは、予想外にも程がある。
「まあ、でも…食べ物は大事だし」
仕方ない、とカボチャを抱えて歩き出すと、周囲の住民たちが再び寄ってきた。
「カボチャ、最高!」「勇者様、ありがたいカボチャをどうするんですか?スープですか?パイですか?」
「いや、私もまだ決めてないんだけど…てか、何でこんなにカボチャに夢中なの?」
茜は周りの人々がカボチャを見つめる目の輝きに少し引き気味になったが、急に何かが閃いた。
「あ、そうだ! これ、食べ物に困ってるんだから、ここら辺で料理してカボチャパーティーを開けば、少しは喜んでもらえるかも!」
住民たちはその提案に大盛り上がり。「カボチャパーティー!」「万歳!」と口々に叫びながら準備を始めた。茜もその熱気に押され、仕方なくカボチャの皮を剥き始める。
「意外と簡単に剥けるな…しかも、このカボチャ、ほんとに甘い!」
軽くカボチャをかじった茜は、驚くほどの甘さに感動した。スイートポテトのような甘さが口の中に広がり、まさかの絶品カボチャだ。
「これ、ほんとにすごいじゃん! 魔物を倒して得たものがカボチャだけとは思ったけど、意外に悪くないかも…」
茜が上機嫌でカボチャを切り分けていると、その時――
「グワァァァ!!」
突然、背後から叫び声が響いた。振り返ると、街の端からまたもや巨大なモンスターが現れている。
「また魔物!? もう勘弁してよ!」
しかも、今回はなんとカボチャのような顔をした魔物だ! まさに茜が目の前で料理していたカボチャを巨大化させたような姿。
「嘘でしょ!? カボチャを料理しようとしたら、そのカボチャが襲ってくるなんて展開、聞いてない!」
住民たちは再び大騒ぎしながら逃げ出し、茜はその場にポツンと取り残された。だが、逃げてばかりじゃいけない。さっきのタコ魔物のように、何か方法があるはず。
「そうだ、玉!」
茜はポケットの中からまたもや神様からもらった玉を取り出した。この玉で何とかならないか? でも前回は、たまたまうまくいっただけだし…。
「まあ、やるしかないよね!」
彼女は意を決して玉をカボチャ魔物に向かって投げつけた。しかし、今回は玉が何の反応もせず、ただコロコロと地面を転がるだけ。
「え、効かないの!? 神様、どうなってんのよ!」
その瞬間、空から声が響いた。
「お前、毎回俺に頼りすぎだぞ! たまには自力で何とかしろ!」
「ちょっと! 神様、それじゃ話が違うじゃん! 玉くれたのに、今回は使えないとかあり得ないでしょ!」
神様の声は「知るか」と言わんばかりに消え、茜は途方に暮れる。
「もう…どうすればいいのよ…」
すると、その時、カボチャ魔物が茜の手元にあった普通のカボチャを見て、急にピタッと動きを止めた。
「え? 何? このカボチャが気に入った?」
茜は恐る恐るカボチャを掲げて見せると、カボチャ魔物が急におとなしくなり、まるでそのカボチャを欲しがるように手を伸ばしてきた。
「ちょっと待って、これで解決?」
茜は驚きながらも、手元のカボチャを魔物に差し出すと、魔物は満足げにそれを受け取って…そのままペロリと平らげた。
「いや、食べちゃったの!? しかもおいしそうに!」
カボチャ魔物はにっこり笑い、そのまま何事もなかったかのように森の中へ帰っていった。
「……え、これで終わり?」
茜は呆然と立ち尽くし、再び手に残された空っぽのカボチャの器を見つめる。
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次回予告:「茜が神様に抗議しようとしたけど、またしてもトラブルに巻き込まれた件」
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