第46話 きのこ狩り
「このあたりとかありそうですね」
みんなで朝食を済ませ、リーファさんに見送られ俺達は玄関を出た。
というわけで今日はキノコ狩り。
ここは山小屋を下った先にある山の中。シロもみんなといられて楽しそう。
辺りから水しぶきの音が聞こえる。
山小屋の場所はマナで座標を理解できるようになった。
これもマナや魔法への理解度が高くなったから。
練習に付き合ってくれたみんなには感謝しかない。
「え? どうして分かるんですか?」
エリカさんは俺に尋ねる。
たしかに、風景は変わらない。だからなんでキノコがあるのか分かったのか疑問に思ったのかもしれない。
「えっと……この付近って水の音が聞こえるじゃないですか」
「キノコってジメジメした環境を好むんですよ。ジメジメしてるってことは薄暗くて、水場が近いこと。あとはキノコが生える場所があれば良いらしくて、ちなみにキノコは枯れ木とか倒れた木の近くに生えることが多いんですよ」
とはいえ、キノコには色々な種類があるから、特定の種類を探すとなると微妙に違かったりするらしいけれど。
「つまり、水場近くの薄暗い枯れ木の近くを探すと見つかる……ってことです」
俺が言い終われると、みんな目を丸くして俺を見ていた。
あれ? ちょっと引かれた?
「ほぉ……ユキトくん。詳しいな」
「ユキトさですね。すごいです」
良かった。引かれたわけではないようだ。
「ははっ……昔調べたことがありまして」
仕事を辞めて山に向かっている間に調べていた。
のんびりするなら山の恵を採りに行ってもいいかなって……実現するか分からなかったけどウキウキしながら動画をみていたのだが、気づけば俺は異世界(山小屋)に来ていた。
もう使うことはない知識だと思っていたけど、役に立てそうで良かった。
「ユキト。キノコ、みつけた」
ユイちゃんはキノコを指さす。白いキノコを指さす。
「お、これは食べられそうだね」
「じゃあ、とる」
ユイちゃんは根本を風の魔法で切って白いキノコを採取する。
「とれた」
ユイちゃんが採った白いキノコをステラさんが鑑定する。
「どれどれ……おぉ、正解だよユキト君」
良かった。どうやらキノコの知識は異世界でも使えそうだ。
「ところで、毒がないと思ったんだい?」
「このキノコ。ところどころ
「そうだね」
「
「なるほど。綺麗なキノコは毒があるから他の生き物に齧られないということか。勉強になったよ。ギルドでも冒険者の間で広めたいくらいさ」
「あくまで、可能性なので……本当に困った時の最終手段くらいに思っていて頂ければ」
「いやいや、最終手段でもなにもないよりはマシさ。特に駆け出しの冒険者は実力も経験も浅いからね。遭難してしまって、食べる物もなくて死ぬ……なんてこともあるんだよ」
「それは……壮絶ですね」
たしかに、何もないよりマシか。
ここにいるみんなは冒険者の中ではかなりの上級者。
上級者もいるということは、初心者もいる。
命を落とさないようにするために知識を持つことは、たしかに武器になるだろう。
「それにしても、ユキトくん。実は鑑定スキル持ちなのかい?」
「持ってませんが、便利そうなので欲しいですね」
「いや、それは待ってくれ! ユキトくん。それでは私の存在意義がなくなってしまうのではないか!!」
「別にステラさんの良さって鑑定スキルを持っているから……という訳ではないですよ? それにあったら良いなくらいなので。基本的には自給自足をしたいので」
「お、おう……これが恋愛の駆け引きってことかい?? 私はユキトくんの手のひらの上で踊らされていたということか……」
ステラさんは何故か肩をがっかりと落とす。
いや、そんな駆け引きした覚えないけどね。
「ウチも採ってきたっす!! これはどうっすか!?」
ラティアさんは元気よくキノコを持ってくる。
ラティアさんが持ってきたキノコは赤色を基調に白の水玉模様が彩られている。
「ラティア。残念ながら毒さ」
「がーん!! ショックっす!!」
まぁ……見た目通りだよな。
「ちなみに、ユイちゃんが採ったきのこの名前ってなんですか??」
「これはドクナイヨータケだな」
なんだその名前。でも安全ってことなのか?
「リーファさんが持ってきたキノコは??」
俺はリーファさんが持ってきた赤と白のキノコをステラさんに渡す。
「ん? ドクアルタケだな。毒がある。食べたら死ぬ」
「食べたら死ぬんすか!? やばいやつじゃないっすか!!」
危ないやつだ。
それにしても名前そのまますぎない?? まぁ、でもそれくらい分かりやすい方がいいよな。
「次こそは食べられるキノコを採ってくるっす!!」
「ラティア!! 良いこと言った!! たくさん採ってやりましょう!! ユキトさん!! 私も頑張りますよ!!」
「エリカ先輩!? 分かったっす!! ウチやってやるっす! うぉぉぉおおお!!」
「そうですね。でも適度に頑張りましょう」
と言いつつ、俺もやる気がちょっと出た。
それから、しばらくキノコ狩り。
みんなで和気あいあいとキノコを探すだけでも、俺にとっては十分楽しかった。
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