第43話 ワイン樽
「ただいま戻りましたっす!!」
玄関の扉がノックされたから扉を開けると、朝ブルドー村に行ったはずのラティアさんがビシッ! と敬礼のポーズをしていた。
既に辺りは暗くなっている
ラティアさんの息は上がっていた。
つまりラティアさんは急いで帰ってきたということ。
嬉しいけれど、ちょっと申し訳なく感じる。
「すいません。俺のために」
「いやいや、ウチもはやく戻りたかったんで」
ラティアさんは手と首をブンブンと振る。
「それに約束したじゃないっすか。ウチ、早く戻るっすよって!」
ラティアさんは『ニカっ~!』と満面の笑みで言う。
「ありがとうございます……先にお風呂に入りますか?」
急いで帰ってきたということは汗をかいてるかもしれない。その状態でのんびりよりは汗を流してスッキリした方がより休めるだろう。
晩ご飯を用意するとなっても少し時間かかるし。
「おや……なにか二人は良い雰囲気じゃないか? ステラちゃんは除け者にされて悲しいぞ」
何故か後ろにいたステラさんがチャチャを入れる。
いつの間にいらしてたんですね……。
「あ、ユキトさんさえよければ先に出しても大丈夫っすよ!! お風呂はその後からでもいいっす!」
恐らく、ワインの樽のことを言っているのだろう。
出すのは構わないのだけど、大きさ大丈夫かな。
幸いにも地下室にはそこまで荷物が置いてなかったから、掃除は思ったよりも楽に進んでいた。
念のため、地下室のホコリは風の魔法で集めたけど……想像以上の掃除のしやすさ。風魔法……吸引力が変わらないのが偉すぎる。
魔法って本当に便利だと感じた。
というか今更だけど……大きいものでも収納袋に入れて移動すればドアの寸法を気にしなくていいのか。
この事は覚えておいても損はないだろう。
「そうですか……それじゃあ、お願いします。場所は地下室にあるので、そちらまではご案内します」
「了解っす!!」
「私も着いて行こうかね。ブルドー村のワイン樽……私も少し気になるのでね」
ステラさんは無駄に頷きながら付いてくる。
地下室の扉を開けて、電気のスイッチを付ける。
「うおっ……いつ見ても真っ暗な部屋が昼のように明るくなる仕掛けには驚かされるな……」
「ほんとうすごいっす!! いつまでも昼みたいに明るいと気持ちまで明るくなるっすよね!!」
ステラさんとラティアさんの二人はで電気を点けるだけでこの反応。
なんだか。俺の手柄じゃないのに褒められて嬉しい。
神様とか俺の世界の人が発明をしたものが褒められたような気がした。
俺はそれが妙に嬉しい。
ラティアさんは収納袋を広げる。魔法陣を広げた後、両手に魔法陣を展開して収納袋に手を突っ込み樽を取り出した。
ラティアさんはそのままワインの樽を壁際に置いてくれた。
「よっ!! ここで大丈夫っすか!?」
「大丈夫です。あの……ラティアさん、その魔法ってなんですか?」
「えっと……風魔法と肉体強化の魔法っす!!」
「風魔法とに肉体強化……ですか?」
「そうっす!! 同時に使うとものがめっちゃ軽くなるんすよ!!」
「そうなんですか……今度俺もやってみようかと思います」
すごくいいことを聞いた。
重たいものが持てるようになるってことは、それだけ色々なことができるということ。
応用すれば、力が必要な作業も魔法で解決できるものも増えるだろうし……やっぱり魔法ってすごいな。
まぁ、失敗してぎっくり腰とかなってしまっても困るから、確実にできるために練習していこう。
怪我をしてしまっては本末転倒だから。
「あ、そういえば、ブルドー村の村長さんから手紙預かってるっす!! なんかユキトさんでもステラさんでもどちらか……って言ってたっす!!」
ラティアさんは手紙を『ビシィ!!』という音と共に取り出した。
ラティアさんが取り出すと無機物ですら元気になってしまう……そんな気がする。
「うーん。一応、私が見よう。ワイン樽に関しての説明だと思うが、ギルド関係の内容があっても困るからな」
「それもそうですね」
「どれどれ……」
ステラさんは手紙を開けて一読すると、
「あぁ、ギルドには関係のないものだね」
と言った。
「あ、そうなんですか。ちなみになんて書いてあったんですか?」
俺はステラさんに尋ねると、
「ん? あぁ……要約すると空の樽とワインが入った樽が入っていることと、ワインを作る時は中に入っているワインを空にすることで樽の違いで味の違いを味わえます……ってな感じで書いてるな」
と返した。
ステラさんが手紙を読んだのってほぼ一瞬だったけど……いやぁ仕事できる人は読みなれているんだな。
「なるほど……分かりました」
樽は木材でできている。樽の中で潰した果実が熟成されてワインとなる際に木材の香りが移るらしい。
つまり木材香り次第でワインの出来が変わるという。
あぁ、そのうち自分で樽を作っても面白そうだな。
でもその前に。
「まずは頂いた果実の種をダメにならないようにしっかりと育てきらないとな」
そうじゃなきゃ、ワイン造りのスタートラインにも立てないから。
「あの、ユキトさん。もしもワインができたら――」
ラティアさんは俺を真っすぐ見て、
「――ウチが一番に頂いてもいいっすか?」
少し悪戯っぽい笑みを浮かべるのだった。
===========================
≪大事なお知らせ≫
最新話までご覧頂きありがとうございます!!
皆様の応援で異世界ファンタジージャンルで週間で『11位』になりました!!
本当にありがとうございます!!
少しでも面白いと思って下さった方はページの↓にある『☆で称える』の+ボタンを3回押して更にランキングを押し上げてくれると嬉しいです!!
フォローボタンも押して頂けるとめちゃくちゃ作者が喜びます!
応援よろしくお願い致します!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます