第42話 感謝のループSIDEラティア

「さてと!! そろそろ着くっすね!!」


 ウチ、ラティア・ラーフラッドはブルドー村に来たっす!


 ユキトさんがブルドー村の危機を救ったお礼をウチ、ラティアが代理で樽を取りに来んすけど……既にユキトさんの山小屋の温泉が恋しいっす!!


 とはいえ、ユキトさんの温泉は聖水とかいう貴重なものだったんすよね。最初聞いたときは仰天しちゃいましたけど、みんな気にしていないので、気にしないことにしたんすよ……。


 ウチも感覚がおかしくなっちゃったんすかね?


 いや~!! そんなことよりも昨日はユキトさんに恥ずかしい話をしちゃいましたね!


 ウチの身の上話なんて話すつもりはまったくなかったんすけど、ユキトさんの前だとウチは弱くなっちゃいました!! 


 ユキトさんはまた聞いてくれるって言ってくれましたけど、なんか癖になっちゃいそうだから怖いっすね! 


 まぁ……ウチ的にはもう1回くらいなら話したいと思ってるので、それで我慢するっす!


 そんなこんなでブルドー村の村長の家。


 ブルドー村にはギルドの依頼で何回もお邪魔しているので慣れたものっす。


「ごめんくださいっす~!! ユキトさんの代理できたっす~!!」


 ウチがそう言いいながらドアを叩くと、ドタドタとした足音が近づいてきたっす。


「おぉ! ラティア殿!! この前は本当にありがとうございました!! おかげで今日も村人は日常を過ごしておりますぞ!!」


 出て来たのはブルドー村の村長。


 個人的に冒険者として嬉しい瞬間っすけど……やっぱり褒められたり感謝されたりすると、やって良かったな〜って思うっす。


 折角なら、直接聞いてほしかったすけど、ユキトさんは別にお礼を言われたいから今回の依頼を受けた訳じゃないっすもんね。ウチとしてはちょっと残念っす。


「どうもっす!! まぁ今回は全部ユキトさんのおかげっすけどね!!」


「それはそうですが、私らはラティア殿にも感謝してますぞ!!」


「え? ウチっすか?」


「そうですぞ! ラティア殿は定期的にこの村付近の討伐依頼を受けて下さるではありませんか!!」 


 だってそれは仕事だから……とは言いづらいっすね!


「ラティア殿にいつも助けて頂いているのも事実ですぞ!! その感謝の念はいつかお返しさせて頂きますぞ!!」


「そ、そうっすか……? そういうことしとくっす!!」


 いや~! 耳が熱いっす!!


 まさかのベタ褒めじゃないっすか!!


 さすがに予想してないっすよ!!


「あ、忘れない内にこれをお渡しするっす。ギルドから預かってる代理証っす!」


「たしかに受け取りましたぞ。それではお渡しする樽ですが……こちらの蔵の中のありますぞ。少し重たいので男手を用意しますぞ」


「あ、大丈夫っすよ!! ウチ、弓使いっすけど、簡単な肉体強化の魔法くらいなら使えるっすから!」


「おぉ……さすがS級に最も近いと言われてるラティア殿ですな!! それでは蔵まで案内致しますぞ!」


 とはいえ、あまりにも大きいと持って帰っても入れられないみたいなことがあるかと思うっすけど……大丈夫っすかね?


 案内されて蔵の中に入るとウチの身長の半分くらいの大きさの樽が2つあった。


 ひとまず懸念けねんしていた感じにならなさそうっす。


「こちらがご用意させて頂いたものですぞ。これよりも大きなものが入用でしたら、その時に言ってほしいと伝えて下され」


「了解っす!!」


 樽の中が全部ワインだとしたら相当な重さ。


 ひとまず、ステラさんからお借りした大き目の収納袋を広げる。


 おぉ……この大きさなら問題なさそうっすね!


「それじゃあ入れるっす!!」


 ウチは風の魔法で樽を浮かして負担を軽くしつつ、肉体強化の魔法を使って持ち上げる。


 ウチがエルフで良かったのは風魔法との親和性が高いところなんすよね!


 ユキトさんやユイ先輩と比べると魔法に熟練している訳ではないっすけど、風と肉体強化の魔法だったらウチも同時に使えるっす!!


 まぁ、あの二人だったら別に張り合うなんてこともしないと思うっすけど。


「あれ? もう一つは空っすか?」


「そうですぞ! これは新樽しんだるですぞ!」


「そうなんすか!!」

 

 正直、何が違うか分からないっす!!


「ちなみにこのワイン樽ですが、この中で作ったワインが入っておりますぞ。新しくワインを作る場合は、一度、この中の樽のワインを空にして下さいませ。ビンに詰めてもいいですし、みなで分け合っても良いですぞ。そうされましたらこのワインの樽を母体にしてワインを作れば簡単に作れますぞ!!」


「分かったっす!!」


「ちなみに、新樽から作っても美味しくワインが作れますぞ!! 是非、味の違いを楽しんで下され!! その際はお渡しした果実の実をすりつぶして下され。さすれば樽の中で発酵するので、美味しいワインを作れますぞ!!」


「そ、そそそそ、そうなんすね!!」


 ヤバいっす!! 何を言ってるのかまったく分からないっす!!


 とりあえず、ワインを作る時には樽を空にしないていけないから……


 つまりエリカ先輩にガブガブ飲ませれば大丈夫ってことなんすかね!? 


「はっはっは! ちゃんと説明用のメモもご用意しているので、それを渡して下され! 困ったことがあれば、私、もしくは、ステラ殿を通じて言って下さればいつでもお助け致しますぞ!! 私達が困った時に来て下さったのですから当然、ユキト殿が困っていたらお助け致しますぞ!!」


 ユキトさんはすごいっすね。


 困った時に助けて、それで困った時に誰かが助けようとしてくれて……そんな関係が無限にループして……。


 多分、ユキトさんからしたらウチもその輪の中に入ってるんすよね。


 きっとユキトさんならウチが困っていたら手を差し伸べてくれる……そんな予感がしてるっす。


 実際、ウチやエリカさん達がユキトさんの家にお邪魔してても温かく迎えてくれていますし。


 文句の一つも聞かないということは……ユキトさんが許してるってことなんすよね。


 ユキトさんはきっと誰であろうと関係なく手を差し伸べてくれる……そんな気がするっす。


 だからウチもユキトさんの力になりたいんすよね。


「それじゃあ、たしかに受け取りしたっす!!」


「もう帰ってしまわれるので?? ラティア様でしたら感謝の意を込めて存分におもてなしさせて頂きますぞ!」


「お気持ちだけ受け取っとくっす!! メモも確かに受け取ったんでお渡しするっす!! それじゃあ村長、またっす!!」


 ウチはそう言って村長とブルドー村に手を振る。


 今は無性にユキトさんのところに戻りたくて。


 それに――


「――なるはやで帰るって、ユキトさんと約束しちゃったっすからね」


 パーティを組むことには抵抗があるけれど、ウチは誰かと関わることが好き。


 そういう意味でユキトさんの山小屋はすごく居心地が良くて……。


 ウチはちょっと駆け足でユキトさん達の元に帰るのだった。




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