第39話 お手伝い

「ほぉ……すごいじゃないか。こんな立派なコーロをユイが育てたのかい??」


 ステラさんはユイちゃんが育てたコーロを見て関心している。


「えっへん」


 ステラさんの一言に嬉しそうにするユイちゃん。


 俺とユイちゃんは一通り収穫を終えた後、俺達は山小屋に戻った。


 日課の水やりはさらっとウェザーコントロールで終わらせたし、俺の畑の分は明日以降収穫しても大丈夫。


 今はユイちゃんが初めて収穫したコーロでお祝いをしたかった。


 きっとユイちゃんにとって記憶に残る1日になるだろうから。


「ユイ。本当にすごいね。思えば毎日水やり頑張ってもんね。えらいえらい」


「もっとほめて」


 上機嫌のユイちゃん。ここまで分かりやすいと年相応という感じがする。


 いや、普段のユイちゃんが大人しすぎるだけなのだけれど。


「え!? これユイ先輩が育てたんすか!! めっちゃ美味しそうっす!!」


「そうですね。実もしっかり詰まっている感じがします……市場にでているコーロよりも相当質が良いですよ。お世辞抜きで」


「本当ですよ。私もたまに王様に呼ばれて、王国内で食事することがありますけど……食材のレベルが桁違いですね。さすがユイ様です」


 各々、ユイちゃんが育てたコーロを褒めている。


 たしかに……しっかり育っている。


 異世界の基準はよく分かっていないが、農業が栄えている現代日本のスーパーで並んでいるトウモロコシと比べてもかなり質が良いのが分かる。


 純粋にみんな、コーロの出来が良すぎて驚いているのだ。


「みんなにたべてほしい」


 ユイちゃんは嬉しそうに言う。


 そうだよな。折角の初収穫だし、みんなに美味しく食べて欲しいよな。


「ということで、今日はユイちゃんが育てたコーロをメインに使って夕ご飯を作りたいと思います。ユイちゃんも手伝ってくれる??」


「わかった。ユイ、てつだう」


「よし。それじゃあ台所に行こうか」


「うん」


 俺はそこらへんに置いてある椅子を持っていく。


 多分、台とかないとユイちゃんの身長だとやりづらいと思うから。


 ユイちゃんは俺が持って行った椅子に乗る。見た感じはちょうど良さそう。


「高さはちょうど良さそう??」


「だいじょうぶ。もんだいない」


 ユイちゃんのお墨付きも頂いたから、これで料理はできるだろう。


 メニューはそうだな……。焼きトウモロコシは外せないとして……スープとかも良いかい知れない。


 あ、冷蔵庫にはバターもあるしコーンバター、改め、コーロバターとかもいいかもしれない。


 よし。方針は決まったな。そんな感じで作っていこう。


 シロには茹でて冷ました分のコーロをあげたい。


 甘いからきっと喜んでくれるだろうから。


「ユイちゃん。シロの分に1本貰ってもいいかな?」


「だいじょうぶ」


「良かったらユイちゃんがあげてみる?」


「シロ、よろこぶ?」


「そりゃあもちろん」


「わかった」


 シロも食べるの好きだから、きっとユイちゃんにとってもあげごたえがあるだろう。


「ありがとう。それじゃあ、まずは一緒に手を洗ってからコーロをこうか」


「まかせて」


 俺とユイちゃんは手を洗った後、コーロの実に周りにある葉を剥いていく。


「すごいなユイちゃん。上手に剥けてるね」


「おひげだらけ」


 一通りコーロを剥き終わったら水洗い。


 全部水洗いを済ませたら、キッチンペーパーで水を取る。


 ついでも鍋に水を入れて弱火をかけつつ、おおよその準備は完了だ。


「じゃあユイちゃん。ゆっくりとコーロを入れてみようか」


 ユイちゃんは無言で頷くと、水を張った鍋の中にコーロを入れていく。


「できた」


「ありがとうユイちゃん。助かったよ。後は待ってるだけだから。リビングでのんびりしててもいいよ」


 俺がユイちゃんにそう声をかけると、ユイちゃんは首を横に振って、


「ここでみてる」


 と鍋を眺めていた。


 それもそうか。初めてちゃんと収穫したコーロものを、自分の手で料理するんだもんな。


 できることなら最後まで見届けたいよな。


「わかった。でも危ないから鍋にはあんまり近づきすぎないでね」


 ユイちゃんは無言で縦に頷いた。


 それなら俺も上手に料理してあげないとな。


 今日はユイちゃんのために精一杯頑張ろう。


 俺はフライパンに油を引いて、コーロを1本置く。


 そこに俺は醤油をかける。


『ジュ~』という音と共に、醤油の香ばしい匂いが鼻腔をくすぐった。


「いいにおい」


 ユイちゃんは少しだけフライパンを見つめている。


「そうでしょ? ちなみに、コーロにも合うから期待してね」


「たのしみ」


 そうして俺は調理をすすめる。良い焼き加減になったら皿に移し替える。


 よし。良い焦げ目の付き方だ。


 自画自賛だが完璧な焼き具合。


「それじゃあお手伝いをしてくれたユイちゃんには、みんなより先に味見してみようか」


「うん」


 俺はユイちゃんに焼きコーロの乗った皿を手渡す。


「みんなには内緒だよ……おっと、熱いからちゃんと冷ましてから食べてね」


「わかった」


 ユイちゃんは焼きコーロの端っこを持って『ふー。ふー』と息を吹きかける。


「いただきます」


 そして小さい口を開いて真ん中のあたりにかじりつく。


『しゃきしゃき』と新鮮な野菜特有の音が聞こえる。


「自分で収穫したコーロの味はどう?」


「すごく……おいしい」


「よかった」


 ユイちゃんは無言で焼きコーロを食べ続ける。


 お気に召して何よりだ。


 それじゃあ俺も色々と作っていこう。


 さて。今日はコーロづくしだ。


 そうして俺はユイちゃんに見守られながら、今日の晩御飯を作っていくのであった。

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