第24話 ユイの魔法
「よし。腹も膨れたことだし、色々やるか」
俺は外の倉庫の前で荷物を広げる。
今日も無事に晴天。絶好の畑作業日和。
リュックの容量が大きくなったおかげで、整理は大変そうだった。
とはいえ異世界産の植物の苗や種が多いから成長が楽しみだ。
食用だと分かって育てるのだから、間違いなく食べることができるのだから。
ある程度、成長したら収穫の目安はステラさんに聞こう。
「まぁ、まずは似たような物から植えていくとするか」
どう成長するか分からない種と稲っぽい苗がある。最初はこれを植えてみよう。
収穫できるものが多くなるのは、それだけ楽しみが増える。がぜんやる気もあがる。
そういう訳で俺はシャベル片手にまずはどう成長するか分からない種を埋めるところからスタート。
ステラさん曰く、そのまま埋まれば育つとのこと。
というわけで前に耕した畑におおよそ50センチ感覚で種を置く。
あとは種の上から土を被せて水をやる。
言葉にすると簡単そうだが、種を置いてから土を被せてからが本番だ。
「よし、もう一息だな」
ヒョイ! バサッ! ヒョイ! バサッ! ヒョイ! バサッ!
俺はリズム良くシャベルで土を被せていく。
少しでも体力を残すために全身を使うことを意識する。
それでも腕に乳酸が溜まっていく感覚がする。ちょっとずつ腕が重たくなっていく。
でも楽しい。少しずつゴールが近づいてる感じがした。
「よし。こんなもんか」
10分後。耕した広さ分の種を埋め終わった。
しゃがみ作業は疲れるけど楽しい。
心地の良い達成感だ。
「ユイもてつだう」
後ろから声をかけられて振り向くとユイちゃんが俺を見下ろしていた。
「なにしたらいい?」
「うーん。そうだな……一緒にお水をあげてくれないかな??」
それくらいならユイちゃんだってできるはずだ。
「わかった。おみずあげる」
ユイちゃんは胸を張りながら「ふんすっ」と鼻息を鳴らす。
「みてて」
ユイちゃんは手を宙にかざして、
「うぇざーこんとろーる」
青の魔法陣を展開する。
「え?」
周囲から黒い雲が集まる。
「まじっくれいん」
ユイちゃんが作り出した黒い雲から、局地的な雨が降る。
「まじか……」
これがS級魔法使いの実力。
ユイちゃんはいつもゆったりとした雰囲気を漂わせているから、忘れていたがトップクラスの魔法使い。
その実力はたしかに本物だった。
「これくらいでいい??」
ユイちゃんは1分くらい降らした後、魔法陣の展開を止める。雨は止んだ。
「う、うん。十分だよ……ありがとうユイちゃん」
「えっへん」
ユイちゃんはドヤ顔で胸を張る。
すごいな。俺も頑張って練習してユイちゃんくらいの魔法を扱えるようになりたいな。
よし。頑張ろう。
「ほかにもある??」
ユイちゃんは俺に尋ねる。
気持ちはすごく嬉しいんだけど、折角ならユイちゃんにも育てる楽しみを共有したい。
そうだ。
「ユイちゃん。もう一つお願いしてもいい??」
「まかせて」
「少し待ってね」
俺はシャベルとクワを持ってきて、入り口近くに縦横50センチほど耕した。
「ここの場所はユイちゃんが面倒を見て欲しい。できる??」
「できる。ユイにまかせて」
「じゃあこれが種ね。手で優しく埋めてみて」
「わかった」
俺はユイちゃんに余った種を渡す。
ユイちゃんは俺が耕した場所にその玉ねぎみたいな種を埋めた。
「できた」
「それじゃあ次は水をあげようか」
「わかった。うぇざーこんとろーる」
ユイちゃんは今度は小さめの雨雲を発生させて雨を降らす。
「できた」
「偉いぞユイちゃん。それじゃあ今日からこの場所はユイちゃんの場所。毎日ちゃんと見てね」
「わかった。そうする」
ユイちゃんはコクンと頷いた。
「それじゃあよろしくね」
俺がそう言うとユイちゃんは無言で頷いた。
これでユイちゃんも植物を育てるのを楽しんでくれれば最高だ。
「それじゃあそろそろ戻ろうか」
「もどる」
今日の畑仕事は終了。
俺とユイちゃんは
願わくば、この植物達がユイちゃんのようにまっすぐ育ってくれたら嬉しい。
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