第11話 約束
「ユキト。ユイ……ここにすむ」
食事を終えた後、ユイちゃんは鼻息を荒くして言ってきた。
「だめ……?」
ユイちゃんは上目遣いで聞いてくる。
「うっ……!」
なんて断りづらい……。
住むのは構わないけれど、ずっといるのだろうか?
「もれなく私もついてきますよ?」
ビールが入ったグラスを揺らし、どや顔のエリカさん。
「こんなに美味しいご飯も食べられて……ぼんじりって言うんですか? ドラゴンの尻尾がこんなにも美味しくなるとは思ってませんでした。実はユキトさんも魔法使いなんですか?」
エリカさんは「ぷはっ!! 旨い!!」と言いながら焼き鳥のぼんじり、ならぬ焼きドラゴンのぼんじりを口にほおばり、ビールを勢いよく飲んでいた。
ただ……気のせいかもしれないけど、脂の乗り方はいつも食べてる異世界肉の方が美味しいと感じる。いや、ドラゴンの尻尾も美味しいんだけど。
「それにユキトさん。美少女二人に囲まれる生活……お得じゃないですか?」
「いや、別に……」
この一連の流れで美少女要素がどこにあるのか疑問だ。
まぁ、たしかにエリカさんもユイちゃんも顔のパーツはすごく整っているのは事実だと思う。
でも美少女に囲まれる生活を損得で考えたら、お得なのだろうか?
寂しくなくなることは少なくなるのかもしれないけれど……。
「今はシロもいるもんなぁ?」
俺はシロを抱っこすると、頬をぺろぺろと舐めてくる。
あぁ、可愛い。
エリカさんは俺とシロをみて、慌てた様子で言う。
「い、今ならS級冒険者の私が魔法だって教えられます!!」
「それは魅力的だな」
普通に魔法は教えてほしい。いろんな魔法を覚えたいし。
「そういえば、ユイちゃんもS級の冒険者で魔法使いなんだっけ」
「そう」
と少し得意げな顔をするユイちゃん。
「あー、ユイの教え方は独特なのでオススメはしづらいですよ」
「そうなのか……?」
「えぇ……少なくとも私には分かりませんでした……」
苦笑いをするエリカさんにユイちゃんは口を膨らませる。
「そんなことない。まほうかんたん。ばん! としてぼん! とするだけ」
「ね?」
「ま、まぁ……」
エリカさんが言いたいことは分かったけれど、先生は多いことに越したことはない。
「ふふく」
ユイちゃんは不機嫌そうだった。
「そういえば……話変わりますけど、ユキトさんって冒険者ギルドに興味ないですか?」
「冒険者ギルドかぁ……あんまり興味ないな。危なそうだし」
「危険な依頼を受けなければ大丈夫ですよ。それに冒険者ギルドは冒険者から買い取ったアイテムの販売もしてますので、色々と便利なものとかあるかもしれないですよ?」
「そう言われると魅力的だな」
ひょっとしたら庭で育てられる植物とか増えるかもしれない。
ついでに街に出た際に色々なものでも買おうかな。
今あるものを少し売れば多少はお金になるかもしれないし。
エリカさんに目利きをお願いしてみよう。
「分かった。そうしたら、明後日に行こう。今育ててる果実も収穫したいし、ユイちゃんの服の洗濯もあるだろうから」
「本当ですか!! じゃあ明後日に行きましょ!!」
エリカさんは嬉しそうに言う。
「じゃあ、約束の乾杯ですね!!」
エリカさんはグラスを掲げる。
「いいですけど。グラス空いてるじゃないですか」
「いただきます!!」
「じゃあ持ってきますね」
俺はエリカさんと自分のグラスを持つと、
「ユイものみたい」
「ユイちゃんにはまだ早いかな」
「……ユイはもうおとな」
ユイちゃんは納得いっていないようだった。
「そうだ。早く大人になるためにとっておきの飲み物をあげよう」
「ユキト、きいてない」
俺はユイちゃん用に牛乳をグラスに入れる。
「はい、どうぞ」
俺がそう言うと、ユイちゃんは牛乳に口をつける。
「あまい。とてもおいしい」
ユイちゃんは目を輝かせてゴクゴクと牛乳を飲む。
「これを風呂あがりに飲むと美味しいんだよ。今度やってみな」
「わかった」
声の抑揚はないが、目はすごく輝いていた。
よっぽど美味しかったのだろう。気に入ってくれてよかった。
「じゃあ、改めて乾杯ですね!!」
「そうだな」
「「乾杯」」
「かんぱい」
そうして、俺達は飲み明かしたのだった。
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