第12話
秀一郎さんの背は俺と同じ位。
ただ体つきはやっぱり成長過渡期の俺と違って何気にがっしりとして均整がとれてる。俺は喧嘩は負け無しだったしそれなりに修羅場も潜ったけど亜依ちゃんの恋人のふりして初対面で睨まれた時はマジで命の危機を感じた。金城さんが盾になってくれなきゃどうなってたか。
世の中広い。自分より強いやつだってこんな近くにいた。彼と会えたことだけ取っても湯島を出た意味はある。
なんてイケメン若頭を見つめてると、
たたたた…
俺の脇を駆け抜ける仔猫は
「ロウ兄!」
両手を広げて兄貴の胸に飛び込んだ。
大木にたかるセミだな。
…いや、木によじ登ろうとする仔猫か。
イケメン兄貴は仔猫を抱き上げる。
「百合、ちゃあんとAから亜依ちゃんを守ったよ。」
仔猫が兄貴の上から勝ち誇るように俺を見下ろす。突っ込んで来た仔猫から怪我しないように亜依ちゃんを守ったのは俺だっつーの。ガキ相手に言わねえけどな。
「そうか。偉いな百合。これからも亜依を頼むぞ。」
「うん!」
誉められた仔猫は嬉しそうに頬を染めた。
母親がいないし甘ったれなのはしかたねえか。美少女だし、仔猫だし、甘やかしたくなるよな。
なんて何気に見ていると秀一郎さんは仔猫を肩に乗せて反対の腕で亜依ちゃんの肩を抱く。…おアツい事で。なんかムカつく。
「意外と早かったね。」
亜依ちゃんの問いに秀一郎さんは曖昧に答える。なんだちゃんと亜依ちゃんに話してないのかよ。
秀一郎さんは今日は叔父さんの錬治さんに会いに行ったんだ。錬治さんも亜依ちゃんに惚れてて『お披露目』前の異様な警戒体制を心配してこっそり真嶋組に探りを入れてきた。
錬治さんはヤクザとはきっちり縁を切った人だし秀一郎さんとしては面白くないから口出ししないように釘を刺しに行ったんだけど
ふふん?亜依ちゃんには内緒なんだ。
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