第11話

お披露目当日は俺は中には入れないが湯島の両親が亜依ちゃんと秀一郎さんの祝いの席に駆けつける。

俺は両親に会場の説明が出来るようにあちこち詳細に見て回った。

関東のヤクザが集まるんだ。何が起こるかわからねえ。

咄嗟の場合の避難経路は外せない。

とは言えさすがに真嶋組。

あちこち目立たない場所にカメラが仕掛けてあるし組員達が控えられる場所も多い。


「備えは万全か。」


当然だな。俺は亜依ちゃんの当日の移動がスムーズに行くように気を配るか。


「…しなきゃダメかな?」


そんな時耳に飛び込んできたのは面倒くさそうな亜依ちゃんの声。

お披露目の席にカメラまで入ると聞いて、うんざりしたらしい。亜依ちゃんは綺麗な癖に派手派手しい席は苦手だからな。


「『しなきゃダメ』でございます。」


船橋さんが慌てて亜依ちゃんを説得にかかった。『美しい若姐を是非とも披露しなければ!』船橋さんの鼻息は荒い。


「きれーだろーな。亜依ちゃん。」


仔猫がうっとりと亜依ちゃんを見つめた。


「…たりめーだろ。」


美人と評判の成瀬四姉妹の中でも凛とした美しさはピカ一。俺の初恋の人だぞ。

仔猫とそんな言葉を交わしていると

ザワリと周りの空気が変わり亜依ちゃんの表情がぱぁっと明るくなった。


「秀一郎!」


亜依ちゃんから唯一甘い声で名前を呼ばれる果報者。関東龍聖会真嶋組若頭。

真嶋秀一郎。

侍若頭なんて陰で呼ばれてるイケメンだ。

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