第10話
「仔猫じゃないよ真嶋百合。4才。ウサギ組だよ。」
プウッと膨れて俺に抗議する仔猫。
「へえ?ウサギかぁ。」
俺がからかうと更に拗ねて膨れる。面白れえガキだ。
「Aのばぁか!」
唇を尖らせて仔猫は言う。だからっ!俺はAじゃねえっつーの!
「英斗だ。仔猫!」
「百合だ。A!」
俺と仔猫のけなし合いに船橋さんはあきれて亜依ちゃんの案内を始めた。
「「亜依ちゃん!」」
くそっ。仔猫のせいで漫才やっちまった。慌てて亜依ちゃんを追いかけた。
「バカAのせいで亜依ちゃんに笑われちゃうっ。」
仔猫がまた膨れた。気に入らないのはお互い様か。 それにしても4才児にしちゃ打てば響く反応だ。真嶋百合。案外賢い4才児かも知れねえな。なんて考えていた俺は
亜依ちゃん的には『4才児にムキになる大人げない高校生』に見られていたらしい。
船橋さんの先導で亜依ちゃんと秀一郎さんが関東龍聖会のヤクザ達にお披露目する大広間から控えの間を見せてもらう。
すべてのガラスはマジックミラーになっていて、中からは透明で外は見えるが外からは磨りガラスになっている。狙撃対策だと聞いた。
そう言えば、湯島の離れの食堂にも大開口の硝子が嵌め込んであるな。
湯島家のは水族館の水槽の試作品とかで、1メートル近い厚みがあるのに外の和風庭園が綺麗に見える。
バズーカを撃ち込まれても絶対割れねえ!とか親父は自慢してるが家の裏は山だ。
誰がバズーカなんて撃ち込むんだっつーの!
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