第8話

「百合様っ。なになさってるんですか!お客様ですよ!」


ぜーぜーと息を切らして子猫の後ろから現れたのは品の良い乳母と言う感じの初老の女性。さしずめ子猫の教育係だな。気の毒に。こんだけやんちゃじゃ苦労は絶えまい。


「百合ちゃん、こんにちは。今日保育園は?」


亜依ちゃんに話しかけられた子猫はあっさり俺の髪を離すといそいそと亜依ちゃんに駆け寄った。

まったくボサボサになっちまったじゃねえかよ。


「亜依ちゃんが来るから今日は早く帰った!」


保育園をサボったらしいどや顔の子猫に亜依ちゃんの顔がひきつった。


「へ、へえ?」


まあ反応はそれしかないよな。


「まったく、いい加減我が儘を辞めないと亜依さんに嫌われますよ。」


乳母の後ろから現れたのはサラサラの黒髪に白い肌。俺と同じ年位の貴公子みたいな優男だった。ちらりと交わした視線でわかる。コイツとは合わない。

初老の女性は堺紀代美さかいきよみさん。子猫の教育係で優男は桐生蒼生きりゅうあおい。仔猫の護衛だった。

桐生蒼生は俺をしばらく見つめ口角を上げる。挑発してんのか。

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