第4話 予備校
花木 美鳥(はなき みどり)さんの両親の毒親加減は、よーくわかった。
おかげで彼女の心が病んでしまったのも、よくわかった。
俺はなんとか彼女を助けたい。
でも。高校生の俺に何が出来るというのだろう。
ドラマで見たことあるけど、
警察!?児童相談所!?
肉体的な暴力や性的な暴力がないのに、
動いてくれるのだろうか。
彼女を家族から離す、、、駆け落ち!?
現実的にちょっと無理。
彼女の盾になって、家族の間に割って入る!?
赤の他人の俺に何が出来るというのだろう。
花木さんと、彼女の父親と、3人で朝食の後のコーヒータイム。
世間話は、ただ右から左へ流れて、
彼女を救う術だけを探っていたが、ここで一旦、離席。
「えっと、お手洗いは?」
「こちらです。どうぞ。」
花木さんはトイレの前まで来ると振り返って、近づいて、小声で、
「私と一緒にいてくれる、というのは、信じていいですか。」
「もちろん。」
俺はまた、ノリと勢いで返事をしてしまった。
それに伴う具体的な制約など想像もしないで。
トイレから出てくると、
彼女の父親のニコニコ顔に迎えられた。
「武佐士くんも美大狙っているんだって?うれしいねぇ!」
「はい、芸大の建築科を考えています。」
「パパは、昔、高校で美術を教えていたのよね。」
「そう、大勢美術系大学に送り出したよ。」
「ねぇパパ、武佐士くんに実技試験対策を教えてあげて、
武佐士くんも、それで今日来てくれたのよね。」
あれっ、まあ目的はその通りか。父親が絡んでくるとは予定外だが。
「は、はい、できればぜひお願いします。」
「パパ、私と同じように、
このアトリエを武佐士くんにも使ってもらってもいい?」
「いいよぅ。僕がいる時はレッスンもしよう。
仕事で留守も多いが、ここは自由に使ってもらっていいよ。
美鳥が部屋の鍵を持っているからね。
でも二人だけの時は、間違いがないようにね。
今朝は、ちょぉーぉっと、びっくりしたからね。」
笑顔で言われると、ちょと怖い。
「美鳥も、ここが予備校だと思って、二人でしっかり勉強するんだよ。」
「予備校ね。パパ、ありがとう。」
「先生、ありがとうございます。」
こうして、時間が許す限り、ここへ通うことになった。
彼女と父親の二人だけの時間を、出来る限りなくしたい。
進学を考えている僕にとっても、願ったり、のはずであったが。
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