第2話『あんパンとコーヒー』
「あ、あんパン高い……あれ?」
目を覚ますと、レトロな雰囲気の喫茶店のような場所のソファーにボクは寝かされていた。
「あ、起きましたか?」
「キミは……さっきのメイドさん?」
そこにいたのはメイド服を着たふわふわロング髪の可愛いメイド服を着た女の子だった。
あの路上であんパンを配っていたメイドさんだ。
「えっと……突然倒れちゃったので……とりあえず、ウチのお店に運んだんですけど……ご気分は大丈夫ですか?」
そうだ! 空腹だったボクは彼女の暴利的な価格のあんパンを食べて気を失ってしまったんだ。
……どうやら、彼女がボクをここまで運んでくれたらしい。
「ゴメン、えっと……ここは?」
「あ、はい! ここは、カフェ『あんマルク』です」
カフェ、あんマルク……つまり、店の雰囲気からして喫茶店ということなのだろうか?
確かに、一見すると普通の喫茶店という感じの店内だ。
まぁ、彼女がメイド服なのを除けばだけど……。
「ここは、喫茶店なの?」
僕がそう尋ねると、彼女は花のような笑顔でこう答えた。
「はい、あんパンとコーヒーを楽しんでいただけるコンセプトのカフェです♪」
「その割にはお客さんが全然いないけど?」
「は、恥ずかしながら……」
そういうと、彼女は気恥ずかしそうに顔を俯いてしまった。
ヤバイ、倒れた所を助けてもらったにもかかわらず、失礼なことを聞いてしまったかもしれない。
しかし、だとしてもこのお店にはボクと彼女以外に人がまったくいない。そう、喫茶店だというのに他の従業員の気配すらしないのだ。
「このお店はキミだけしかいないの?」
「あ、はい! 元々はパパとママが経営していたお店なんですけど……今は私一人だけしかいないんです……」
「あ、なんかごめん……」
つまり、このお店は彼女のご両親のもので、その両親は既に亡くなって彼女一人でこのお店を経営しているということなのだろう。
どうやら、ボクはまた聞いてはいけないことを聞いてしまったらしい。
「そ、そんな! き、気にしないでください! え、えーと……あ! まだ自己紹介がまだでしたね!」
すると、彼女はそんな空気を察したのか、話題を変えようと自己紹介を始めた。
「わたしの名前は
あ、噛んだ……
「…………」
「あうぅ……そんな見つめないでください……」
「あ、うん……ゴメン」
これは、ボクも自己紹介をしておくべきかな。
「ボクは
「それで、あんな場所で倒れてたんですね!」
「うん、あのあんパンは本当に美味しかったよ」
そう言えば、あのあんパンって配ってたんじゃなくて路上販売だったんだっけ?
しかし、残念なことに大学の寮を追い出されたボクにはそんな一個480円もするあんパンを支払うお金すらないわけ――てか、あんパン高いよな?
「ゴメン、あんパンの料金あんだけど……」
「そ、そんな! あれは売れ残りだったのでお金は別に……あ! でも、売れ残りだからと言って別にちゃんと食べても問題ないあんパンですからね!?」
どうやら、彼女のあれは本当にただの施しだったらしい。
つまり、ボクはマッチ売りの少女ならぬ、あんパン売りのメイドさんに救われたわけか。
「じゃあ、ボクは失礼するね。あんパンとっても美味しかったよ」
「あ、あの……っ!」
しかし、いつまでもここにお邪魔するわけにもいかないな。
そう思って、お店を出ようとすると、彼女がボクを呼び止めた。
「何かな? えっと、お金なら……すまないんだけど――」
「そ、それは大丈夫です! えっと、そうじゃなくて! そ、その~……」
すると、彼女は予想外の提案をボクにした。
「よ、よかったら……ここで働きませんか?」
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