第8話
「お待たせしました。」
きっちり30分後。
私が部屋に戻ると航は制服に着替えてベッドに腰掛け三沢さんは既に姿を消していた。
「行くぞ。」
立ち上がる航に頷き忘れ物がないことを確認。
私の鞄は航の右手。
差し出された左手にしがみつくのは
足元がハイヒール故だ。
ローファーやスニーカーしか履いたことが無かった私。
榛原高校の制服と共に差し出されたのは何故か真っ赤なハイヒール。
グレーのセーラー服に赤のハイヒールって…
リボンが赤だから可笑しくはないけど何故にセーラー服にハイヒール?
確かに158センチの私がハイヒールを履いたら長身の航と釣り合うけど
お陰で足元が不安定で支えが無きゃ歩けない。ましてや階段を降りるなんて…!
航がいなきゃ絶対に足を挫いてるし。
かんかんかん…
鉄製の階段にハイヒールの靴音は響いて嫌でも注目を集める。
ばっ!!
そんな効果音が聞こえそうな視線の塊。
このふた月、毎晩見慣れてる筈なのになんでこんなに注目をされるのか。
「「「お疲れ様です!」」」
「ああ。」
軽く頷き皆の側を悠然共に歩く航。
いつものように階段を降りた所から後ろには三沢さんと中津さんがついてる。私はと言えば航の腕をぎゅっと握り転けないように全神経を足元に向けていた。
こんな視線の中ずっこけたりしたら航に恥をかかせるしワリのいいバイトをクビにされちゃう!
「‥‥‥!」
睨み付ける足元にヌッと飛び込む黒のブーツ。
足を止めた私はバランスを崩しかけ航にしがみついた。
なんなの急に!
不意に進路を塞いだブーツから視線を上げて文句を言おうとしたら
「セイタ!」
航が彼を見て眉をしかめた。
「航?」
進路を塞がれたなんて初めてだった。
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