第6話

緊急時は登録の1を押すと【freewing】の誰かに繋がるらしい。

だからってバイトで姫ヤってる私をわざわざ助けてくれるかどうか…怪しいモンだと思ってる。

私がバイトだって知ってるのは航と三沢さんと中津さんと運転手の馬渕まぶちさんの四人しかいない。

ここはどう見たって不良さんの塊だし面倒事に首を突っ込むほど気のいい連中にも見えない。

四人以外と口きいてないし。

自分達が話したことない姫なんてマジ飾り物じゃん。

その姫がSOSを打診したからと言ってすんなり助けてくれると思う方がお気楽だ。


「アヤさん?」


三沢さんに怪訝な顔を向けられて我にかえった。


「大丈夫です。拉致られたりしないように気をつけてますから。」


ほとんど人相の変わる特殊メークしてるし。名前だってアヤとか適当な名前で呼ばれてるし。名付け親は三沢さんか航か良くわかんないけど。もちろん本名ではない。バイト先で使う源氏名みたいな感覚だ。


「自分の身は自分で守ります。」


私が言うと驚いた顔を見せる。


「無理だろ。ヤクザや族が相手だ。」


聞こえた低い声は


「航!」

「総長。」


タオルで濡れた髪をガシガシと拭きながらシャワー室から帰って来た航だった。キツイ印象が戻ってる。すっかりシャワーで目が覚めたみたい。

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