第4話

ちなみに「航」と呼び捨てるのは雇い主である彼の希望。抵抗はあったけどひとつ年下と聞いて遠慮なく呼び捨てている。


「航?起きて。」


少しずつ声を大きくして耳元で囁く。

耳に息がかかるとうっとうしいらしく長い腕が飛んでくるから注意が必要だ。前に吹っ飛ばされかけて間一髪避けた経験がある。

吹っ飛ばされ無かったのは小さい頃空手を習ってた賜物で。そうでなきゃ手足を骨折してたかも知れない。

こうやって考えると高い時給も妥当なのかも知れないと思ったりもする。


「航。10時。」


少し大きな声を出し細心の注意を放ち肩を揺する。腕を掴まれて捻り上げられたら洒落になんないし。

そう、羽鳥航はかなりの危険人物。


「…アヤか。」


ほっ。今日の目覚めは良い。


「うん。10時。起きて。」


私が少し離れると


「シャワー浴びてくる。」


のそりと立ち上がりシャワー室に消える。私は彼を見送り勉強道具を片付けシャワーを浴びる準備をする。入れ代わりでシャワーを浴びる為に。

なんでって?

石鹸の匂いで私達がそう言う関係だと周りに印象付ける為らしい。

化粧は落とせないけどウィッグを外して髪は洗う。(また被って帰るんだけどね。)

水道代もかなり助かるから有難いんだ。それを思うと多少の危険は仕方ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る