女神様は罪を残す
魔朱真露
第1話 それが彼女の生き方です
能力、それはこの世界に存在する不思議な力のことである。よくアニメにある魔法と同じ様なものだと思って頂いて構わない。瞬間移動したり、姿を変えたり。未来を見るってものもある。
能力というものの存在は悪用を防ぐために世界政府によって秘匿にされている。読心系の能力があると知ったら人間は自分以外信じられなくなるからね。
使用方法は簡単、能力名を言うだけだ。能力名は能力者が生まれた時から持っている。
能力を持つものは生まれた時から、その能力のプロである。ある炎系の能力者は生まれた時から手のひらに炎を生み出すことができたとか。
必ずしも全ての人間に備わっているわけではなく、今の時代のこの国においては持っている方が少数派だ。
そして生まれた能力者は二つに分かれる。政府に保護されるか、自分の力で生きるか。多くの能力者は、生まれた時から周りの人に忌み嫌われるため、政府に自然と保護されるパターンが多い。が、嫌悪された人の中でも裏社会での立場を入手したり、力の制御か効くよう練習したりすると、政府の力が無くとも、強く生きられるのである。
あと、ごく稀なパターンであるが、両親が能力者であったためにそのまま受容されるというのもある。
私は後者であった。だが、普通の能力者とはちょっと違う。なぜなら、
私は能力者ではなかったためだ。
私は捨て子だった。両親の顔も話も一切覚えていないし、情報屋に聞いてもわからないと言われるだけだったため、なぜ捨てられたのかは知らない。
そして、路地裏で泣いていた(推定)の私を、拾った人がいた。顔は良い方だったが、目の下には隈ができており髪はボサボサで、不健康そうな感じがする男だった。名前、名前はなんだったかな、よく覚えていない。
彼は女神教といって女神を絶対神と崇める宗教に入っていた。それも、過激派の。女神教過激派、有名な犯罪者グループだ。女神が言ったやら自分を呼んだやら言いながらテロを起こすわ、人を殺すわ、人類の敵であった。
彼は女神を地上に下ろすために能力を改造する実験をしていた。能力の改造は法律で禁忌とされていたが、全く気にせずに行っていた。
実験体として、数多の子供達を拾い、誘拐し、まるでモルモットかのように飼い、使い捨てる。
私もその一人だった。言うことを聞かないのはスタンガンで躾けられ、それでもなお抵抗するものは無慈悲に殺された。死体は放置されて、あちこちに転がっていた。あまりの恐ろしさに発狂するものまでいた。もちろん使い物にならなくなったその子は殺された。
気づけばそこには頭の良い子と躾けられる快感に目覚めた子と、何も感じなくなった子の三タイプの子供たちがいた。
私は聡い子だったので、言われたことはなんでもやった。というか、ほとんどそこで育ったようなものなので、それが当たり前だと信じて疑わなかった。むしろ、ご飯を食べられ、寝床が用意されているそこは天国のような場所だった。太陽とは縁のないようなところだったが。
そんな私を彼やその仲間たちは気に入った。そして、彼らは決めた。この子に全てを託そうと。
実験はスムーズに進んだ。麻酔をし、脳に電波を送り、薬を飲まされた。
そして、能力は完成した。
誰もが成功を観た。これはうまくいっただろうと喜んだ。私もよくわからないが、喜んだ。
だが、能力は発動しなかった。
何故か。皆で必死に探した。脳の回路を切り開いたり、能力値を測ったり。
だから、彼らは見落としていた。最も単純で、当たり前のことを。
そう、私は男の子だったのだ。
男の子だから女神系の能力が使えたとしても発動するわけがない。ただそれだけだ。
その事実に気づいた彼らは私を殺そうとした。よく記憶にないが、何とかして逃げ切って情報屋に匿ってもらい、今に至る。
能力名【女神様の仰せのままに】
見た人を魅了させる能力だ。自らの身に女神様のお姿を下ろすとかなんだとか。上手く力を使えば、メディアを通じての魅了もできるのだろうが、あまり良く能力の実態を理解していないため、まだまだ訓練が必要である。
最初私はこの能力をどうしようかと思ったが、見た目が女の子であれば能力が発動することに気づいたので女装することにした。決してそう言う趣味だとか心が女の子だとかではない。それは絶対にない。
何に能力を使っているのかというと、自身の巻き込まれ体質を利用して、犯罪者がもらうはずだった盗品を横取りすることによって生計を立てている。
私は能力の犯罪者の中でもできるだけ目立たないように心がけていたつもりだったが、間接的に盗むという行為が癪に触ったのか、今では警察で最も有名で、女神課なんてものも作られているほどだ。まったく、勘弁してほしい。
「んもう! なーに一人で考え込んでるの! 私が美人って話? うふふ女神ちゃんったらー、照れるなー」
考え事をしていたら何やらリザルトちゃんに勘違いされたようだった。困る。
「いや、関係ないよ。それよりも例の件、教えて」
「わかってるわかってる」
彼女、ほわわんとしているが、やるときはやる女だと私は知っている。現に、彼女はやっぱり私のこと好きなんだーとかうふふーとかいいながらもちゃんとたくさんの資料を用意している。
「じゃ、本題に入りますぉー」
ここまでで勘違いしていると思うが、私は常に警察に迷惑をかける浮浪美少女というわけではない。
「こちらの女性、現在警察署で働いています」
生計を立てながら、あることを調べているのだ。
「女神教過激派の幹部、
女神教について。
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