女神様は罪を残す

魔朱真露

プロローグ 銀行強盗?終わりましたよ

私はどうしたものかなと呟く。


目の前には銃を持った覆面の男たち、その横には黒いバッグに札束を詰める銀行員の方々。


(これ、どう考えても銀行強盗だよね)


急に大声を出したかと思うと、銃を取り出して金をだせやら大人しくしろやら。ちょっとお金を下ろそうと思ったらこの騒ぎ。


まったく自分の巻き込まれ体質が憎い。ま、無くなられたらそれはそれで困るのだけども。


この後知り合いと会うという予定があるのだ。しかも今回に限って重要案件である。遅れたら絶対イヤミを言われるのは目に見えている。


(早く警察来ないかなぁー)


というか、ここ地下で外の人に気づかれにくいから、まだ呼ばれてないかもしれない。いや、かもだから、流石に誰か気づいてくれるだろう。だが、今日ばかりは遅れたくない。でも、目立つのは嫌だ。しかし、だって、けれど……。


(あー、もうっ! 仕方ない通報してやる!)


おっと、思わず美少女らしからん発言をしてしまった。見た目も心も清楚に、そう、君が代は千代に八千代に。


ちょうど死角になるスカートの中で、スマホを起動して、1、1、0、ぽちっと。


「おい、何をやってるんだ」


あ、気づかれた。まあ、スカートの中にに手を入れる銀髪美少女なんて違和感でしかないもんね、うん。ん、なになに? 先程の清楚発言はどうした? さて、何のことやら。


覆面の一人(覆面Aとする)、が銃をこちらに向けて近づいてくる。


(あ、やばいやつじゃない?)


そっと、奥の壁に掛かっている時計を見る。待ち合わせまであと十分ちょいだ。走ってギリギリ間に合うかどうか。それならなおさら、この強盗に構ってやる時間はない。結局こうすることになるのか。私の葛藤を返せ。まぁ、しょーがない。ちょっとばかし、やりますか。


ちょうど目の前にいるし。


 

次の瞬間、覆面Aは少女に殴られ、見事に宙を舞っていた。



落ちてくる前に追撃する。


少し遅れてこちらに気づいた覆面B、C、Dが慌てて銃を構えるが……遅い。全員まとめて薙ぎ払う。集まっている方がやりやすいんだよね。


その後ろから覆面Eが隙のない動きで襲いかかってくるので、とっさに覆面Bから頂いた……もとい奪った銃で撃つ。


「あれ、もう終わりか」


どうやら先程の覆面Eがボスだったらしい。先ほどまではちょっとした脅威だったが、本気を出した私の手にかかると瞬殺だった。具体的に言うと字数にして1000字にも満たない。

 

きっと素人の寄せ集めだったのだろう。銃の使い方がなっていなかった。安全装置をつけたまま発砲しようとする初歩的間違いを犯していたしね。覆面Eはちょっとマシだったが、その違いは微々たるものだ。


おっと、時間がない。では、約束の場所に行くとしますか。


(あ、そうそう、忘れるとこだった。)


と、唖然とした表情でこちらを見ている客や銀行員の方々を振り返る。



「今見たことは忘れてね。能力発動、【女神様の仰せのままに】」



え? 何故私がそんなに強いのかって? 


ただの淑女の嗜みだよ。

_______________________

走って走って路地裏に入る。


二番目の右の角を曲がり、金属製のドアを3回、四分音符のリズムで叩く。

 

ぽよー、という謎の返事が聞こえたので中に入る。


そこにいたのはフリフリのメイド服を着た金髪の美しい女性であった。その顔はとても整っていて、お胸やお尻は大きく、腰はきゅっとしている。銀髪美少女である私でさえも見惚れてしまうほど。ファンクラブ会員は万を超えたらしい。


だがだが、残念ながら男性の理想を全て兼ね揃えたような彼女はこの世に存在しない。今日私とここで待ち合わせをしている情報屋の能力によって作られたものだ。


能力名【彼の時、我々の道は分たれた】は、ドアの先にある空間を複製することができる能力である。

とても簡単に言うとパラレルワールドを生み出す能力だろうか。パラレルワールドといえば、世界改変を思い浮かべるオタクの方々がいるかも知れないが、事象を変えられるというわけでもない。ややこしい。

そして、その能力の中に生み出した空間内を操作するものがある。情報屋はそれを使い、自分のアバターである美少女リザルトちゃんを作り、操作している。

情報屋は人の憎みをよく買うものらしく、殺されないようにするためだとかでないとかなのです! などと説明したが、ともかく私は情報屋リザルトちゃんに会いにきたのでした。


「どうしたの、ラブレターならお断りしているけど、女神ちゃんだったらいいよ?」


「いや、違うから(即答)」


透き通るような美しい声だが、いつも言っている内容が台無しだ。ギャップ萌えというやつなのだろうか。んー。どちらかというと、オンラインゲームで美少女のキャラを使っているおじさん的な感じがする。


彼女の言う“女神ちゃん”は私のことだ。私の能力名に女神が含まれるからなんだそうで、多くの人に女神、女神様、女神ちゃん、女神さんなどと呼ばれる。そう呼ばれるのはあまり好きじゃないが、じゃあ逆になんて呼んで欲しいかと言われたら困るのでほっといている。


「というかぁー、3分遅れてるんだけど。あんなに今日のことを楽しみにしていたのに、意外」


リザルトちゃんがぷんぷんと口を膨らませる。正直に言わせていただくと、めちゃ可愛い。


「あー、ごめんごめんって、リザルトちゃん。実はちょっと事件に巻き込まれたんだよね」

 

私は彼女に見えるように右手にある“モノ”を持ち上げる。


 

そう、銀行強盗が持っていく予定だった、大量の札束の入ったバッグを。

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